経済学で生物多様性を守る - 環境の価値を測る
生物多様性が失われて環境問題となっている
生物多様性とは、地球上の生きとし生けるものすべてのことです。我々の日常生活は、この生物多様性に依存しています。我々が呼吸して生きていくためには、植物の光合成による酸素が必要です。日々の食料は、野菜から肉まで、ほとんどが生きていたものです。この生物多様性が、現在、急速に失われていて、深刻な環境問題となっています。
生物多様性には守るべき価値がある
生物多様性には価値がないように思われていた時代がありました。例えば、特別にきれいな森林なら、観光地や自然公園として、とっておく価値があると考えられていました。しかし、見た目が平凡な森林なら、木々を伐採して、工場を建設すれば、工業生産による収入が得られるので、とっておく価値がないと考えられることがありました。しかし、現在では、生物多様性には守るべき価値があるという考えが、広まってきました。その結果、森林が平凡なものでも、木々を伐採しないで、とっておいた方がよいと考える人が増えてきました。仮に、森林を守るためなら、100円を支払ってもいいという人が1万人いたとしましょう。そうすると、その森林の価値が、100万円であると考えることが可能です。一方、森林をなくして、工場にした時の収入が、50万円だとしましょう。そうすると、50万円の収入より、100万円の価値を選ぶのが合理的だ、ということになります。
経済学で環境の価値を測って正しい判断をする
経済学は、1970年ごろから、生物多様性を含む森林や環境一般の価値を測る手法をあみだしてきました。これによって、「森林を守るべきか、それとも、工場を建設すべきか」という問題に関して、感情的にではなく、価値の数値を比べて、合理的に判断できるようになりました。環境の価値は実際に測ってみると、意外に大きく、これにより、破壊が保全に変えられる傾向がでてきました。経済学が生物多様性を救っていると言えます。経済学は、無味乾燥なものではなく、このように、環境を守ることができるのです。
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先生情報 / 大学情報
山梨大学 生命環境学部 地域社会システム学科 教授 渡邊 幹彦 先生
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