一人ひとりの凜(りん)とした人生を支えるための「老人看護」
「老人看護」とは何か
この領域は、老人看護と老年看護、ほかにも高齢者看護などの呼び方があります。老人看護と言う時は、「人を看る」という意味からです。「老年」「老年学」はもっと広い意味で、細胞レベルや、死生観など哲学分野も含まれます。老人を対象とする看護の背景には、多くの学問領域や考え方があるのです。
日本では病院機能が、急性期を対象とする医療に戻ろうとしているので、老人は介護の対象として分類される傾向にあります。しかし看護の観点からすると、老人の健康は急性期も元気なときも、いつでもそれを護る支援が必要です。看護師も専門家として、高齢になっていく人たちがどんな人生を送りたいのかを知り、一人ひとりが凜(りん)とした生き方ができる社会を、一緒につくっていく役割があるのです。
老人看護は意外に新しい分野
人間が年を取ることに社会全体が意識を向け、本格的な研究が始まったのは、実は戦後からです。世界中に戦後生まれの団塊の世代がたくさん登場し、そこから、社会学や医学が研究され、発展しました。平均寿命も50年だった時代からどんどん延び、1990年代から大学のカリキュラムでも成人看護から老人看護が独立しました。このように老人看護は意外と新しい分野なので、ニーズは大きいものの、研究自体、まだまだ未開の学問分野です。
お年寄り像は時代とともに変化している
「65歳」は世界中で人口動態を比較する基準の年齢ですが、同じ65歳でも、10年前の65歳の人と今では生活も考え方も変化しています。また、老人を取り巻く地域全体も変化してきました。老人看護ではさまざまな社会調査に触れ、常に今の人たちがどんな生き方をしているのかを探る必要があります。
また、看護は寝たきりや身体の不自由な患者さんはもちろん、元気な高齢者も対象です。最新の医学から最善の療養法を調べたり、逆に元気なお年寄りからその秘訣を学ぶことも、看護の重要なスキルとなります。
新しい時代にどれだけ敏感でいられるかが問われ、それが老人看護の醍醐味とも言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
高知県立大学 看護学部 看護学科 教授 竹崎 久美子 先生
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