コンピュータで義歯をつくる
ようやく動き始めた歯科治療のコンピュータ化
コンピュータは、いまや生活や仕事のさまざまな場面で使われていますが、歯科治療でコンピュータ化が進み始めたのは、ようやく最近になってからのことです。ほんの少し前までは治療のすべてが昔ながらの手仕事で、いまでもまだ手仕事が多く残ります。ですから歯の治療には長い時間がかかってしまうのです。例えば、「全部床義歯(ぜんぶしょうぎし)」、つまり総入れ歯をつくるには、何度も型を取る必要があります。歯の噛み合わせは、食べるためだけでなく、力を入れる際にも重要な役割を果たしていて、高い精度が求められます。そのため、型を取っては微調整を繰り返し、標準的なケースで治療回数は全6回になります。1回あたり20~30分、長いときは1時間近くかかるときもあります。さらに、手作業だと、どうしても人によって技術水準にばらつきが出ます。
コンピュータで義歯をつくる
コンピュータ化が進む背景には、治療時間を短縮するとともに、治療の質のばらつきを抑えて、治療水準を底上げする狙いがあるのです。コンピュータの導入で大きく変わると期待されているのが、「歯をつくる」分野です。既に、「クラウン」や「ブリッジ」といわれる1本ないし数本の義歯(入れ歯)をつくる分野では、臨床応用が始まっています。口の中を撮影し、必要なデータをコンピュータに入力すると、コンピュータ制御されたドリルが歯を削り出していきます。
超高齢社会に対応するために
非常に高度な専門技術が要求される全部床義歯では、コンピュータはまだ人の手に追い付いていません。一方で、その高い専門性ゆえに、全部床義歯をつくれる人材は限られていて、高齢化が進むとともに義歯を必要とする人が増えると、患者さんの増加に治療が追い付かなくなることが懸念されています。そこで、超高齢社会の到来に対応すべく、コンピュータを使って全部床義歯の形を決める診療支援システムの研究開発が、いままさに進められているのです。
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