身近に眠る資源、使用済み天ぷら油を新たなエネルギー源に
地球上の資源は無限ではない
私たちはたくさんのものを消費しながら生活しています。地球上に存在する資源は、決して無限ではありません。限られた資源やエネルギーを無駄なく有効活用していこうとする意識が、これからの社会には必要不可欠になります。そうした資源の中には、私たちのとても身近なところに眠っているものもあります。
天ぷら油からバイオ燃料を生み出す
揚げ物料理を作る時に欠かせない天ぷら油(食用油)ですが、使用済みの天ぷら油をどうやって処分するかは、どこの家庭でも共通した悩みでしょう。使用済み天ぷら油の主成分であるトリアシルグリセロールは、メチルアルコールと触媒を加えて化学反応させると、脂肪酸メチルエステルとグリセリンに分かれます。脂肪酸メチルエステルは新たなエネルギー源、バイオ燃料として活用できます。使用済み天ぷら油からのバイオ燃料の製造は、比較的小規模な設備でも可能なため、日本国内でもすでに実施されている例は数多くあります。これまではお金を払って廃棄物業者に処分してもらっていたものが、資源の有効な代替品として利用できるようになるのです。
「もったいない」という意識を大切に
使用済み天ぷら油からのバイオ燃料の製造プロセスで課題となっているのは、副産物として生成されるグリセリンに触媒によるアルカリ分が残ってしまうことです。そうしたグリセリンの精製処理にはかなり大がかりな設備が必要となるほか、精製してもグリセリンの用途が限られ、需要もあまりないことから、民間だけでは処分が困難な状況にあります。
それでも今後、商業施設や学校などとうまく連携を図り、効率的に使用済み天ぷら油を回収する仕組みが整備されれば、こうしたリサイクルと資源の再利用の取り組みをさらにレベルアップできるはずです。「もったいない」という意識を常に大切にしながら、身近な資源の活用法について考えることは、持続可能な社会を形成していく上で欠かせない取り組みなのです。
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東京都市大学 理工学部 応用化学科 准教授 髙津 淑人 先生
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