規制緩和を受け、さまざまな道を模索するバス
タクシーのようなバスの登場
2002年の規制緩和以降、バス会社は交通手段に乏しい地域の路線を維持するため、さまざまな手法を模索し始めました。そのひとつが利用者の必要に応じて路線外も走行する、タクシーのような乗合バスです。降車の際に寄り道をすることは以前からありましたが、事前に連絡を受けることである程度、乗車時刻や乗車地点の要求にも応じるようになり、使い勝手をよくしたのです。そのために進められたのがバスの小型化で、輸送力を落とす代わりにルートや停車場所の融通が利くようになりました。また少し遅れてタクシー業界も乗合タクシーを導入し、現在では両者が入り交じった状態で運行されています。
規制緩和の弊害
運行上、最も難しいのが輸送の効率を上げることです。病院などを別にすれば同時間、同方向に行く人を乗り合わせさせるのは難しく、その点が課題となっています。運賃を既存のバスよりやや高めに設定し、地方自治体から補助金も充てられていますが、各会社とも利益を出すのに四苦八苦しているのが現状です。また配車トラブルを避けるために事前登録制を採っている地域も多く、ハイキングや観光目的の利用者を取り込めないという欠点もあります。
都市部での試み
都市部では主要道路や行き先の限られた山村部以上に人の動きが読みにくく、タクシーのようなバスの導入には基本的に慎重です。代わりに導入されつつあるのが、急行バスです。ブラジルやヨーロッパの一部でも運行されていますが、東京ディズニーリゾートと北部の駅を結ぶ「環七シャトルバス」など、日本でも急行バスが増えつつあります。専用道路こそありませんが、路面電車や地下鉄と違い用地買収の必要がなく、PTPS(公共車両優先システム)を利用すれば信号での停車時間も短いため、既存のバスよりもスピードに優れています。急行バスをそのまま導入しているところはまだ少ないですが、ノウハウを応用した高速バスは増えており、利用者の交通選択肢が広がっていると言えるのです。
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東京海洋大学 海洋工学部 流通情報工学科 教授 寺田 一薫 先生
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