ヨーロッパ連合と自由化思想の多様性
EUの出発点
EU(ヨーロッパ連合)は1993年に設立された国家共同体です。ヨーロッパは第二次世界大戦前の20世紀初頭までは自由主義的な経済活動が行われていました。その後、世界恐慌や第二次世界大戦により経済が混乱する中で、自由主義とは反対の保護主義がはびこる国際経済になってしまったのです。そこで戦後に、ヨーロッパに平和をもたらすとともに、経済復興を進めようとしたのが1957年に結成されたEEC(ヨーロッパ経済共同体)であり、1967年にはEC(ヨーロッパ共同体)、そしてEUに発展します。
ヨーロッパ的自由主義
自由主義をめざしているとはいえ、加盟国の考え方がすべて共通しているわけではありません。EUを牽引するフランスとドイツを比較すると、フランスの方が多くの制約が存在しています。フランスでは歴史的に、市場を完全に自由にすることには警戒が強く、アメリカ的な自由主義をそのまま取り入れることには社会の反発があります。自由主義的な市場経済の大切さは理解していながら、社会を市場の犠牲にすることには否定的な見解を持っているのです。また、急に自由化を進めれば、アメリカとの経済競争に勝てないことも予想されます。そのため、社会が適用できるスピードで段階的に自由化する政策をとっているのです。
国ごとの温度差
加盟国のうち欧州通貨統合の参加国に対しては、欧州中央銀行による一元的な金融政策が行われ、財政赤字や債務に関しての一定の基準が与えられています。しかし、それを厳格に守ることを求めるドイツや、財政赤字を出してしまったギリシャなど、国ごとに温度差があるのが現状です。このような事態について研究者の見解としては、通貨統合そのものが無理だったという意見と、基準を守らない国があるから失敗しているのだという意見に分かれています。それでも、改めて国民通貨を導入するのはコストの面からも現実的でなく、参加国の経済状況のバランスを取りながらユーロの価値の安定を図るという難しいかじ取りを迫られています。
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帝京大学 経済学部 国際経済学科 講師 工藤 芽衣 先生
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