「アイドル」「推し」という窓から現代社会を見る
アイドルを推す
2020年前後から、好きなアイドルを「推し」、それを応援する行為は「推し活」と呼ばれるようになりました。熱狂的なアイドルファンはそれ以前にも存在していましたが、推し活をする人たちには、好きな対象をほかの人に勧める、つまり「好きを共有する」という特徴が見られます。また全国のコンサート会場に駆けつけたり、アイドルゆかりの地を巡る「聖地巡礼」や、あるいは(チケットの当選確率を高めたいといった目的で)ボランティア活動などに参加する「徳を積む」といった行為は、独特のアイドル文化を形成するとともに、旅行や観光を中心とする経済効果を生んだり、社会貢献活動につながるという点からも注目を集めています。
アイドル文化とジェンダー
一方で、アイドル文化はジェンダーにも深く関わっています。特にメディア上では非常にステレオタイプ的に扱われ、「男らしさ」や「女らしさ」が強調される場面が多くあります。例えば恋愛をしたことでバッシングされたり、若さが重視されたりするのは女性アイドルばかりです。また、近年ではアイドルの推し活に励む女性にメディアが注目する機会が増え、大きなファンダム(ファン同士の交流・連携)を形成しています。彼女たちは女性オタクと呼ばれることがありますが、男性に対しては男性オタクという呼称は使われません。これはオタク=男性であるという意識がいまだに働いていることを示しています。
アイドルは「窓」である
今日、アイドルはメディアにおいて欠かせない重要なコンテンツになっていますが、ジェンダーの問題を含めて「アイドルはこうあるべきだ」という規範的なイメージが再生産され続けています。私たちもそれを当たり前のものとして受け入れていますが、この「当たり前」を疑う学問が、社会学です。アイドルを研究対象=「窓」と位置付けてそこから現代社会を見ること、そして当たり前にとらわれず問題を見つけ出し、より良い社会づくりにつなげていくことも、社会学という学問が持つ重要な役割なのです。
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