「オノマトペ」は、子どものやる気を引き出す魔法の言葉
小児病棟で聞こえる不思議な言葉
「マキマキしてシュポシュポするよ」「モシモシさせてね」「チックンだよ」、小児病棟で聞かれるこれらの言葉が何を意味しているのかわかりますか? これらの言葉は大人には「血圧を測ります」「聴診器をあてます」「採血します」と伝えているものです。
子どもには難しい医療用語も、情景を思い浮かべやすい擬音語や擬態語の「オノマトペ」を使えば、次に何をするのかが直感的にわかります。それでは、「モクモクしようね」は何を示しているかわかりますか? これは喘息などの治療の時に噴霧される薬の吸入を意味しています。
オノマトペにも方言がある
オノマトペでの声がけは全国的なものです。ほぼ同じような言葉を使いますが、調査すると方言もあることがわかりました。例えば、座ることを関東では「トンして」と言うことが多いですが、関西では「オッチョン」や「オットン」などと表現します。これらは古くからの幼児語として家庭などでも使われるものなので、地域に根ざした表現を使う声がけのほうが、より子どもの安心につながると思われます。
オノマトペの持つ効果
情景が思い浮かぶということは、怖さを想像できるということです。以前採血の際に大人に対するのと同じ言葉がけをした場合と、オノマトペを使った場合との苦痛の度合いを調べた研究を行いました。これには採血の後に、苦痛の度合いを、泣き顔や笑い顔の6段階の絵から選ばせる方法が用いられました。結果の差はあまりありませんでした。ただ、オノマトペでの声がけでは、大泣きした子が笑顔を選んだケースがありました。それは「泣いたけど頑張れたから」という理由からでした。オノマトペを使った言葉がけによって、子どもの頑張る気持ちを促すことができたのです。
研究者は足のばたつかせ方や泣き方などの見た目だけの尺度で判断しがちです。しかし、それだけでは見た目ではわからない違いは見えてきません。子どもの気持ちを測る指標は難しく、これからの小児看護研究の課題です。
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帝京大学 医療技術学部 看護学科 教授 石舘 美弥子 先生
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