外国語を使っているときは、思考力が低下している!?
思考力が低下する外国語副作用
人間が母語でない言語を使って知的な作業をすると一時的に思考力が低下する、という「外国語副作用」が1990年代から研究されています。母語の運用レベルにはない言語を使っているとき、母語と同じように理解することは困難です。それだけでなく、そもそも論理的思考や感情的推論がしにくくなるということも確認されています。
第二言語でトロリー問題を考える
トロリー問題という有名なジレンマ課題を考えてみましょう。この問題には2つのバージョンがあります。暴走するトロリーの先に作業員が5人いるとします。1つのバージョンでは、あなたは線路の切り替えスイッチのところにおり、切り替え装置を動かせばトロリーは支線に入り、5人は助かりますが、支線の先にいる作業員1人が犠牲になります。もう1つのバージョンでは、あなたは線路をまたぐ橋の上におり、隣にいる太った男を突き落とせば、それがストッパーとなってトロリーは止まり、線路の先にいる5人は助かりますが、太った男は犠牲になります。それぞれのバージョンの問題で、あなたならどちらを選択しますか。あなたは今、この問題を日本語で出題され、日本語で考えているでしょう。もし同じ問題が英語で出されたらどうでしょう。問題の意味はちゃんと理解できたとします。あなたの選択(答え)は日本語のときと同じでしょうか。それとも違うと思いますか。
「認知資源」の使い方
心理学には、「認知資源」と呼ばれる概念があり、私たちが母語(日本語)を使うときと英語のような外国語(第二言語)を使うときでは、この認知資源の使われ方が異なるということが研究の結果、わかってきています。上のトロリー問題もこの認知資源の使い方が影響していると考えられています。
母語(第一言語)と外国語(第二言語)を使うときの脳の働きの違いを考えることが重要です。
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先生情報 / 大学情報
国際基督教大学(ICU) 教養学部 アーツ・サイエンス学科 教授 森島 泰則 先生
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