建築と都市の歴史:デザインの鍵をさがして

建築と都市の歴史:デザインの鍵をさがして

建物や都市の「DNA」を探る

どんなものにも歴史や記憶があります。それは「建築」や「都市」でも同じことです。建築や都市の歴史を理解して個性を探り、今まで引き継がれてきた「個性」や「変わらない仕組み」、例えていうなら「DNA」を見出していくのが「建築史」の役割です。
建築史の中でもギリシア神殿や法隆寺のような、長い年月を経た特徴的な建築を読み解く研究は昔から行われてきました。その一方で、私たちが暮らす普通の家や都市の歴史はあまり研究されてきませんでした。しかし、都市の歴史は建築や人々の生活から切っても切り離すことができないもので、その重要性は著名な遺跡や文化財に劣らないのです。

「地域らしさ」をまちのデザインに生かす

こうした都市の歴史の重要性がわかってくるのにともなって、建築史の中でも「都市史」という分野が盛んになってきました。都市史では、例えば建物がどのように道や駅とつながっているのか、この道はいつからこんな形をしているのかといったことを文献やフィールドワークから読み解いて、その都市の「地域らしさ」を見つけ出します。そうして見出された「地域らしさ」は、将来のまちのデザインや設計、その土地のブランディング(ブランドとしての価値の構築)に生かしていきます。

フィレンツェに残るコロッセオの痕跡

都市の歴史が読み取れる例を紹介しましょう。イタリアのフィレンツェという都市の街並みを上空から見ると、一部だけ曲線で構成された箇所が見つかります。これは実は、ローマ帝国時代にコロッセオ(円形闘技場)があった跡なのです。コロッセオというと現在はローマに残る遺跡が有名ですが、ローマ帝国はこれ以外にも支配下にあった複数の地域にコロッセオを建設していて、フィレンツェのものもその一つでした。今は住宅や店舗になっていますが、痕跡は確実に残っています。このように、今のまちの姿からも過去の歴史がわかるのが都市史のおもしろさです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

京都工芸繊維大学 工芸科学部 デザイン科学域 デザイン・建築学課程 准教授 赤松 加寿江 先生

京都工芸繊維大学 工芸科学部 デザイン科学域 デザイン・建築学課程 准教授 赤松 加寿江 先生

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建築学、デザイン学

メッセージ

私は建築と都市の歴史を専門に研究しています。「工学系で歴史を研究する」といってもイメージがわきにくいかもしれませんが、建築や都市に受け継がれてきた「個性」や「変わらない仕組み」を、時間をさかのぼって読み解いているのです。
具体的にはまちの観察や古い記録から建築や都市、暮らしがどう変わってきたのかを読み取って、「そのまちらしさ」を鍵にして将来の建築と都市のデザインや設計を考えます。文化財保存やまちづくりに興味があるなら、ぜひ一緒に未来のまちについて考えてみましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

京都工芸繊維大学に関心を持ったあなたは

歴史都市京都にあって、本学は、伝統文化や伝統産業との深い結びつきを背景に、工芸学と繊維学にかかわる幅広い分野で常に先端科学の学理を探求し、「人に優しい実学」 を志向する教育研究によって、広く産業界や社会に貢献してきました。さらに、本学は、長い歴史の中で培った学問的蓄積の上に、感性を重視した人間性の涵養、自然環境との共生、芸術的創造性との協働などを特に意識した「新しい実学」を開拓し、伝統と先端が織りなす文化を創出する「感性豊かな国際的工科大学」を目指します。