未来は歴史の中にある! 「建築史」は温故知新のライブラリー
歴史的建築物の価値を現代に生かそう
建築を歴史的観点から学ぶのが「建築史」です。建築史は古代から脈々と続く建築の歴史をたどり、その文脈の中で現在の建築をどういうふうにとらえ、どういう方向性の未来をめざしていけばよいのかを考える学問です。
現存する歴史的建築物は各地にたくさんありますが、実は使用されないまま現在まで放置されているものも多く存在します。それらを再生させて現代にうまく活用する工夫を考えていくのも、現代人である我々ができる建築史への重要なアプローチです。
創建時の姿に再現された東京駅
東京駅の丸の内赤レンガ駅舎は大正3年(1914)年12月に建てられた100年以上の歴史をもつ建築物です。戦災で一部を消失して建設当時とは違う姿で修復された駅舎を、最新の免震技術を取り入れながら創建時の姿に忠実に再現する取り組みが、駅舎建設100周年を機になされました。このように建築物の歴史的・文化的価値を生かして未来へ継承することは極めて創造的な作業です。再生活用のプランを立てる際には、デザインや構造における設計者の意図を汲み取り、オリジナルのまま残す部分と現代にフィットするように変える部分との見極めが必要です。
建築物を地域の財産として未来へつなぐ
関西では京都や阪神間、神戸の山の手などに、20世紀初頭に建てられた歴史的建築の住宅が多く残っています。これらは当時世界的に注目された、合理性・機能性・大衆性を主義とするモダニズム建築の香りを色濃く残しています。京の町屋や長屋も、明治や大正の時代から庶民の暮らしに溶け込んだ和の様式を今に伝えています。
たとえ文化財的価値は低くても、古い建築物には街の風景を長年作り上げてきたアイデンティティとしての公共的価値があり、地域住民が主体となって建物の活用運営に取り組んでいるケースもあります。建築はまさに温故知新の世界です。現存する貴重な建物が語る建築史は、未来の建築を創造するライブラリーでもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
大手前大学 建築&芸術学部 建築&芸術学科 教授 玉田 浩之 先生
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