多文化共生社会における医療機関のあり方とは?
医療の現場における異文化交流
日本に在住する外国人が増え続けている現在、片親あるいは両親が日本人ではないという子供は25人に1人の割合で生まれています。異文化を背景に持つ人の割合が、大幅に増えているのです。つまり、病院など医療の現場にも、異文化を背景に持つ人々が多く訪れるということであり、スムーズに治療を行うためには、異文化への理解を深めておく必要があります。
文化の違いで起きるさまざまな問題
日本で当たり前に行われている治療や看護が、文化の違いによって、患者さんにとっては抵抗のあるもの、受け入れられないものであるというケースがあります。例えば中国では、「体を温める食べもの/冷やす食べ物」があるとされており、産後には体を温める食べものを摂ります。「産後1カ月は入浴しない」という伝統的習慣をも守る人もいます。そこに無理に入浴を勧めたり、食べたくない食事を食べさせたりしようとしても、受け入れられません。こうした問題が起きると、回復の妨げになるだけでなく、患者と病院の間の信頼関係も損なうことになりかねません。看護師は看護の対象となる人々の文化や宗教を理解することが必要です。
外国人患者受入れの認証制度
日本では、2011年から「外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP=Japan Medical Service Accreditation for International Patients)」を導入しました。多言語での診療案内や、異文化・宗教に配慮した対応など、外国人患者の受入れ体制が整っている医療機関を認証する制度です。ただし、認証には、外国人に対応できる医療コーディネーターを置くなど厳しい基準があるため、大規模な病院でないと認証を受けるのが難しいという現実があります。
今後ますます増えていくであろう外国人患者を受け入れていくため、こうした制度なども活用しながら、医療現場で異文化への理解を進める教育や施策の検討が求められています。
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東京都立大学 健康福祉学部 看護学科 准教授 石川 陽子 先生
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