外国人看護師が日本で感じる働きづらさ

外国人看護師が日本で感じる働きづらさ

増えている外国人看護師・介護福祉士

日本に在住、あるいは訪問する外国人が増え続けている現在、医療機関に訪れる外国人だけでなく、日本の医療機関で働こうという外国人も増えてきています。
日本では、2008年に始まった「経済連携協定(EPA=Economic Partnership Agreement)」に基づき、インドネシア、フィリピン、ベトナムから、看護師、介護福祉士の候補者受け入れを推進しています。彼らは日本の病院や施設で働きながら日本の国家試験の準備をし、資格を取得します。しかし、日本の医療福祉現場で働く際には、文化や宗教の違い、言語の問題など、さまざまなハードルが存在しています。

日本で直面する文化・宗教の障壁

例えばイスラム教徒の看護師なら、1日に5回の礼拝がありますので、2回ほどは職場で行います。そうした礼拝のための場所が病院にあるのか、あったとしても、適切な場所でない場合があります。
また、イスラム教では豚肉を食べない、女性はヒジャーブと呼ばれる布で髪を覆うなど、さまざまな戒律があります。これはイスラム教徒にとっては非常に重要なものですが、宗教観の薄い日本人にはその意味が理解されずにヒジャーブの着用が禁止されている職場もあります。

効果の高い「接触体験」

こうした問題が続くと、外国人看護師は、「日本は住みづらい、働きづらい」と感じて、母国に帰ってしまうということが起きます。それを防ぐためにも、異文化理解を深めるための努力が必要です。職場となる医療機関での教育も大事ですが、実際に外国人と会話し、交流するなどの「接触体験」によって、実感できることは多々あります。
相手の価値観を尊重するというのが、異文化理解の基本であり、患者さんのニーズを知ることが、看護の基本でもあります。多様な価値観への理解を深めることが、多文化共生時代の看護にもつながっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 健康福祉学部 看護学科 准教授 石川 陽子 先生

東京都立大学 健康福祉学部 看護学科 准教授 石川 陽子 先生

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看護学

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メッセージ

私が専門とする「国際看護学」と「看護管理学」に共通しているのは、事象を分析するというところです。起きている問題にはどんな人たちが関わっていて、どのような利害関係にあり、その人たちがどんな価値観とニーズを持っているかを分析します。人々が何を大切にして生きているかという価値観は地域や文化によって異なり、解決の方向性も異なります。
これは、看護学における大切な手法の一つであり、国際協力のプロジェクトなどでも有効で、私たちの日常生活にも役立てることができるものです。

先生への質問

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東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。