放射線のメス、ピンポイント照射! その技術に必要なのは!?

放射線のメス、ピンポイント照射! その技術に必要なのは!?

放射線の照射精度をセンチ単位からミリ単位へ

腫瘍や患部に放射線をあてる放射線治療では、いかに健康な細胞を傷つけずに、標的の細胞だけに正確に照射するかが求められます。2000年代に入って、「画像誘導放射線治療(IGRT)」という方法が日本に広まってから、その精度は格段に進歩しました。この技術の特徴は、治療計画用に撮ったCT立体画像と、照射する直前に撮った画像を比較することにより、正確な位置合わせができることです。それまで診療放射線技師が目測で、センチ単位で合わせていたものが、ミリ単位で調整できるようになりました。

ピンポイント照射で治療効果もUP!

なぜ、照射直前の画像で比較するかというと、患者が寝る体勢や向き、また体内の臓器の動きなどによって治療計画の時の位置との間に誤差が生まれるからです。放射線治療はいかに治療計画の時の状態を再現して照射するかが大事ですから、照射直前の画像を利用して位置を合わせることで高精度な照射が可能になりました。
また、健康な細胞を避けて当てたい部分にピンポイントで照射できるので、これまでよりも照射1回あたりの放射線量を上げることができます。線量が上がれば、より高い効果が期待できるのです。実際、IGRTやこれを応用した「強度変調放射線治療(IMRT)」などの技術によって、治療効果が上がったことが証明されています。今後は放射線をより正確に計測する機器や、放射線が及ぼす生物学的な影響の研究が待たれています。

理工学と医学を理解する人が不可欠

このような放射線治療には、放射線の照射を主に担う診療放射線技師だけではなく、医学・工学・物理学の分野を総合的に理解している「医学物理士」の存在が欠かせません。医学物理士は、線量検出器などの機器の開発、装置のマネジメント、治療計画のアシスト、さらに陽子線治療や粒子線治療の開発などを担っています。チーム医療の一員として、研究開発者として、診療放射線技師と医学物理士は放射線治療に貢献しているのです。

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先生情報 / 大学情報

藤田医科大学 医療科学部 放射線学科 准教授 林 直樹 先生

藤田医科大学 医療科学部 放射線学科 准教授 林 直樹 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

放射線治療学、医学物理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校で学ぶ科目は「将来、何に使うのかな」と思うかもしれませんが、実際に臨床で必要な知識です。例えば私の専門である放射線治療は、放射線をあてて体内で反応し(物理と化学)、効果が現れる(生物)という一連の流れがあり、高校で学んだことが生かされます。実際には大学で学ぶ深い知識が必要ですが、放射線を医学に応用するには理工学の知識は欠かせません。
本学には、附属病院の放射線棟や、中部地区で初めて認定された医学物理士コースを有する大学院があり、臨床現場でのカリキュラムも充実しています。ぜひ一緒に学びましょう。

先生への質問

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本学では、医学部と医療科学部(医療検査学科・放射線学科)、保健衛生学部(看護学科・リハビリテーション学科)および大学院、研究室が1つのキャンパスに設置されています。日本屈指の病床数を誇り、最先端医療を担う大学病院を併設しており、恵まれた環境のなかで勉学に打ち込むことができます。また、チーム医療に必要なコミュニケーション能力の早期習得が可能で、すべての学部学科交流によるアセンブリ教育を必修プログラムとし、専門職連携をおこなう能力を段階的に身につけます。