ドローンは長距離飛行に向かない? 無人航空機の利便性を高める研究

ドローンは長距離飛行に向かない? 無人航空機の利便性を高める研究

ドローンもジェット機も基本は同じ

飛行機の自動操縦の歴史は古く、ライト兄弟が飛行して10年後の1910年代には自動操縦装置が出はじめました。航空機の操縦は長時間、神経を使わなければならないので、よりよい自動操縦技術が長年求められ発展してきました。無人航空機(ドローン)の歴史も、自動操縦を追うように始まっています。
近年ではマルチコプターと呼ばれる、複数のモーターを搭載したドローンが普及しています。ドローンの自動操縦技術とボーイング787などのようなジェット機の自動操縦技術は基本的には同じものです。近年では技術が向上し、ドローンを目的地に向けて自動操縦で飛ばせるようになりました。

飛行機型の無人航空機

回転翼ではなく、飛行機の形をした固定翼の無人航空機もあります。実は回転翼は効率が悪いので、長距離の飛行には向きません。それでも回転翼が普及しているのは、固定翼無人機の離着陸にはある程度の広さの空間が必要になるからです。固定翼の利便性を高めるためには、周りに障害物があっても機体が深い角度で進入し、安全に着陸できるようにしなければなりません。すでにVTOL(ブイトール)という、固定翼にローター(回転翼)がついていて垂直に離着陸できる飛行機があります。しかしローターなどがある分、機体が重くなります。重いと性能が悪くなるので、ローターを使わずに固定翼無人機の利便性を高めることを目標として研究しています。

飛行機に電気を流せば失速を防げる?

無人航空機の失速を防ぐ研究もされています。飛行機は前に進む速度を遅くしていくと、浮かぶために大きな揚力が必要になります。しかし、速度が遅くなるとある時点で翼の上の空気が翼から剥がれてしまい、揚力が保てなくなります。これを失速といいます。失速を防ぐために、翼の表面にプラズマアクチュエータという電極を貼り付けて電気を流します。するとプラズマ放電が起こり、電極が青白い光でおおわれます。こうすることで、翼の上の空気が剥がれにくくなり、揚力が落ちることを防げるのです。

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先生情報 / 大学情報

帝京大学 理工学部 航空宇宙工学科 教授 米田 洋 先生

帝京大学 理工学部 航空宇宙工学科 教授 米田 洋 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

航空宇宙工学、機械工学

メッセージ

航空に限らず、「なぜ」を深掘りしてみてください。今はインターネットで調べるだけで、もっともらしい情報がたくさん出てきます。しかし深く調べていくともっと面白くなり、わからないことをより明らかにしたいと思うようになるでしょう。深掘りするうちに、本当に興味のあることが見つかります。
ドローンに興味があるなら、ただ飛ばすのではなく、なぜ飛ぶのか、どうすればもっと飛ぶのかという疑問を持ちましょう。そして大学に入れば、「すでにあるもの」ではなく、「まだないもの」を作りだす面白さも感じとれます。

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帝京大学 宇都宮キャンパスは栃木県宇都宮市の北西部の高台にあるキャンパスで、理工学部の4学科(機械・精密システム工学科、航空宇宙工学科、情報電子工学科、バイオサイエンス学科)をはじめとして、医療技術学部柔道整復学科、経済学部地域経済学科が開設され現在は文系・医療系・理工系を擁するミニ総合キャンパスとなっております。それぞれの学問領域で交流を図りながら各分野のスペシャリストとして、将来、さまざまな分野の核として、地域に貢献できる人材を育成します。