誰もが生きやすい社会を作るために
無関心が偏見を助長する
精神障がい者や発達障がい者、性的マイノリティ、依存症やホームレスなど、社会的マイノリティ(少数派)は社会の中で理解を得られず、不利益や生きづらさを経験していることがあります。しかしマジョリティ(多数派)の多くは、こうした苦しい立場にある人たちの存在にほとんど気づいていません。
周囲の大学生に聞いてみると、大半が「学校でも生活圏の中でも社会的マイノリティに会ったことがない」と答えています。当事者がオープンにしていない場合もありますが、周りの人が関心を持たずに見えない存在になっている可能性もあります。そして実体との交流もないまま、偏見だけが助長されていくのです。
「対話」が育む関心の芽
無関心を関心に変え、偏見を解消する方法として注目されているのが「対話」です。特に若い世代が、社会的に生きづらい環境に置かれている人との対話を通して、関心の芽を育むことが期待されています。実際に行われた実験では、精神障がい者などの社会的マイノリティとの対話を通して、お互いに身近さや親密さを感じ、自らの無知や勘違いに気づいたと報告されています。関心をより深めるためには、対話が1回だけで終わらないよう、継続的かつ日常的な設定と、効果的な情報発信が必要です。また、こうした対話の場面では当事者の話を聞くだけになりがちなので、相互に交流できる対話の仕組み作りが今後の課題です。
「無関心の壁」に穴を開けよう!
社会的マイノリティの存在を見えにくくしている背景には、社会的理解の不足から支援制度が十分に整備・活用されていない現状があります。いろいろな能力を持っているのに、周囲の理解不足から能力を発揮する機会がなく、結果的に排除されている人も多いのです。教育や就労の現場における合理的配慮や、継続して働ける雇用の仕組みなど、支援体制の整備が求められています。それは社会的理解の促進にもつながります。厚くて高い「無関心の壁」に穴を開け、誰もが生きやすい社会を作る取り組みは、まだ始まったばかりです。
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先生情報 / 大学情報
高知県立大学 社会福祉学部 社会福祉学科 助教 玉利 麻紀 先生
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