「ケア」って何? 誰でもできる「ケア」と専門的な「ケア」
誰もがケアとともに生きている
「ケア」は看護や介護、福祉の専門家が病気の人や生活に困っている人に対して行うものだと思うかもしれません。しかし、ケアは「人の成長を信じ、関心を持って関わること」です。誰のケアも受けずに成長する人はいませんし、日々の生活の中でまわりの人に手を差し伸べることは何かしらあるものです。私たちはケアしたりされたりしながら、人間関係を築いています。
傷ついた人のそばにいることも大切なケア
落ちこんでいる人や深く悩んでいる人と関わるときには、「聞くケア」がとても大切です。つらいときに、友だちが話を聞いてくれてうれしかった経験があなたにもあるかもしれません。励ましたりアドバイスしたりするのではなく、ただ聞くことによって、相手は「自分を受け入れてくれている」と感じて安心感や信頼感が生まれてきます。
傷ついている人は心の内をすぐには打ち明けられないことも多く、「聞くケア」の前に「そばにいるケア」や「待つケア」が必要なこともあります。このようなケアは特別な知識やスキルがなくてもできる、すばらしいケアなのです。
ケアのプロに必要な死生観
一方、看護師や介護福祉士、社会福祉士などは、専門的な知識やスキルを身につけておく必要があります。例えば重い病気の人や高齢者のケアにおいては「ACP(Advance Care Planning)」の支援が求められます。ACPとは、人生の終わりを迎えるときにどんなケアを受けたいか、家族や大切な人とも話し合いながら意思決定するプロセスです。
病気や死と向き合う人を支える仕事なので、ケアする人自身がどんな最期を迎えたいか考え、死生観をもつことも大切です。大学の終末期看護論の授業や福祉現場で働く人向けの研修で、大切な人への最期の手紙を書いてみて、死にゆく人の気持ちを自分のこととして捉えたりすることがあります。命に限りがある事実や、死にゆく人と向き合うことから逃げないための演習です。人生の終わりを考えることで、自分がどう生きたいかも見えてくるのです。
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先生情報 / 大学情報
東北文教大学 人間科学部 人間関係学科 教授 橋本 美香 先生
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