集まって動き回る微生物の行動を、紙の上で表現する方程式
飢餓状態になると「変身」する不思議な微生物
土壌中に生息している多種多様な生物の中には、餌があるときはアメーバーのように動き回って餌を探していますが、周囲に餌がなくなると約10万ものアメーバー状の生物が集まってきて「集合」します。やがて、「集合」したたくさんのアメーバー状の生物は一つのナメクジのような形になって移動するという、面白い特性をもつ菌がいます。生物学者は、「集合」の仕組みがアメーバー状の生物が分泌するフェロモンに関係があると考え、それを説明するために「走化性方程式」という方程式を考え、研究しました。
生物学の方程式に興味深い数学が潜んでいる
この走化性方程式はもともと、生物が集まる現象を説明するために生物学者が考え、研究した方程式です。それを数学者が見つけて興味を持ち研究しました。その結果、アメーバー状の生物の総和に対応する量がある一定量より小さいと「集合しない」こと、逆にある一定量より多い「集まる」ことが方程式の中で「観察できる」ことを示しました。そして、その「一定量」が8πという値と密接に関係があることを示し、一か所に「集まる生物の量」も8πという値と密接な関係があることを示しました。
いろいろな現象を紙と鉛筆で表現
微生物の動きを表す方程式と「8π」という数字の関係は、ちょっと意外かもしれません。しかし、大学で学ぶ数学は、単に与えられた問題の「解」を導くだけの高校までの数学とは違い、生き物の動きをはじめとするいろいろな自然現象や数学以外の学問のジャンルの問題を数学のことばでとらえ、研究し、理解する面白さがあります。
自然界に多数いる生物の行動、宇宙に点在する星の動きなど、実際に観測しようとすると長大な時間と手間、多数の観察機器が必要となります。そのような現象も、方程式として表し、紙と鉛筆で研究することで、紙の上でそれらいろいろな現象を「観測」できます。そして、その研究を掘り下げることで新たな数学の法則が発見されることもあります。
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先生情報 / 大学情報
福岡大学 理学部 応用数学科 教授 仙葉 隆 先生
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