子どもとお母さんが健やかに暮らすために
母子生活支援施設の役割とは
夫など、身近な家族の暴力(DV)から避難してきた母子の生活を支える「母子生活支援施設」があります。DVが起こる家庭では、同時に児童虐待があるケースも見られます。母子生活支援施設は母子を安全に保護し、暴力による身体的、精神的な傷を癒やし、安定した生活に導くという役割があります。こうした母子への支援では、まず信頼関係を築き、子どもの学習の遅れや、落ち着きがないといった行動上の問題をケアします。一方、母親には十分な子育てスキルのない場合もあります。必要に応じて、子どもからのサイン(訴え)のキャッチなどの我が子との向き合い方、離乳食やトイレットトレーニングなどといった、基本的な母子関係や子育てのスキルの指導も行います。
連鎖させない
母子生活支援施設に避難してくる母親自身も、幼い頃、虐待などで十分な子育てを受けていないケースが多くあります。例えば、子どもの頃に虐待を受けて育った女性が、結婚しても夫とうまくいかなかったり、子育てで強い不安を抱えたりして、母子支援施設を頼らざるをえないケースも多いのです。こうした母親の「負の連鎖」を断ち切って、母子を支えるために、職員には高いソーシャルワーク(社会の仕組みを使って、一人ひとりが生活をしやすくすること)の知識と技術が求められます。
1つひとつの問題から支援のあり方を考える
また、母親はパートや非正規社員での採用が多く、収入が不安定なため、母子生活支援施設を出て、地域のアパートや公営住宅への転居後も、引き続き自立のための支援を行う必要があります。施設にいるときと違い、保育所や学校、市町村、ハローワーク、事業所等との連携も欠かせません。「母子生活支援」の背景は複雑で、現実の生活実態をみると、離婚、住居、就業、所得、学歴等の要因が絡み合っており、制度だけでは解決できない問題が多くみられます。1つひとつの研究を地道に積み重ね、体系化させ、母子へのより良い支援につなげていく必要があるのです。
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新潟医療福祉大学 社会福祉学部 社会福祉学科 講師 渡辺 恵 先生
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