世界遺産に学ぶ、地域の防災力

世界遺産と防災
世界遺産は、かけがえのない文化遺産や自然遺産を国際的な協力のもとで保護・保全し、将来の世代に伝えていくための仕組みです。その遺産が生まれ、現在まで受け継がれる数百~数千年の間に、遺産そのもの、あるいはその周辺地域を自然災害から守るノウハウが蓄積されてきました。例えば建物の場合、台風などで壊れてもすぐに修復できる設計になっていたり、しなやかで衝撃に強い素材が使われていたりする事例があります。また、世界遺産の中や周辺にある集落では、結婚式などの大人数が集まる行事を住民が手掛けることで、百人規模での食事の準備を迅速に行うノウハウが蓄積されています。このノウハウは、被災時に多くの人々に食事を提供する際にも役立てられます。
ベルガマの例
トルコの世界遺産ベルガマは、「ペルガモン遺跡」とその周辺のまちから構成されています。紀元前3世紀~紀元前2世紀にかけて栄えた古都でありながら、現在も人々が暮らし、世界中から訪れる観光客を魅了し続けています。一方で、行政による防災対策がとられていないという現実もあります。まちの人たちは、災害が起こった場合の避難所として、「ペルガモンの遺跡」が拠り所になると答えています。自分たちの命を守る防災の取り組みと、かけがえのない世界遺産を維持する活動を、一体的に考えていく必要があるのです。
「まち」の力を自覚し、守るために
世界遺産に限らず、歴史的な地区、自然景観などは、観光の資源として活用され、地域の魅力を高めています。こうした魅力を災害から守る対策としては、建物の耐震化などのハード面の整備が思いつきますが、同時にソフトの力、つまり人の力が欠かせません。世界的に地域とのつながりが薄れ、集落自体の数も減少する中で、まちに伝わる知恵や経験を明らかにして記録することは、重要な課題といえます。時には集落に足を運び、まちの人たちとお茶や食事をしながら、そこに伝わる潜在的な力を発見することは、地域の未来をつくることにつながるのです。
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