授業をうまく進める鍵は「非言語的行動」の理解
ベテランの先生はここが違う
授業を受けている時、先生の視線に注目してみましょう。児童生徒が発言をしている時、教師歴の長い先生ほど、話している本人だけでなく、周囲の児童生徒たちの反応も、さりげなく見ていることがわかるでしょう。教室の児童生徒全員の理解度を測っているし、授業を面白いと思って目を輝かせて前のめりになっているか、退屈しているかも、先生には伝わっています。ただ、先生方がこれを教授スキルとして理解しているとは限りません。ほとんどは長い間の実践で身につけた、無意識の実践知です。そのため、こうしたコミュニケーションをデータ化して理論的に示し訓練できれば、経験の浅い先生も授業で生かせる要素になると言えます。
非言語的行動による情報のやりとり
コミュニケーションは、言語を介する言語的行動と、そうでない非言語的行動とがあります。非言語的行動には、視線、表情、ジェスチャー、姿勢、対人的な距離、接触などのほか、服装なども含まれます。また、周囲の環境も影響します。場の明るさ、空間構成や座席の配置などに加えて、教室なのか屋外なのかといった条件の違いが該当します。授業のコミュニケーションを分析するためには、授業の映像などをデータ化し分析します。専門的には、非言語的行動はさまざまな学問領域で研究されていますが、教育の視点で研究する場合は教育心理学という領域になります。
進化を続ける授業のコミュニケーション研究
データを分析して、協力してくれた先生にフィードバックすると、「なるほど」と喜んでもらえたり、実践することで授業に新しい気づきが生まれたりと、良い結果が出ることも多くあります。
動画撮影など測定の機器がさらに高度化していくと、測定や分析の方法も発展します。ディープラーニング(深層学習)によりAIが大量のデータから人間の行動を学んでいくと、人間が行っているコミュニケーションの新しい特徴が出てくることも期待されます。ただし、そこに意味を見出し、実際に授業に生かすのは、あくまでも人間なのです。
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先生情報 / 大学情報
高知大学 教育学部 学校教育教員養成課程 教育科学コース 准教授 野中 陽一朗 先生
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