地域の社会的・文化的価値の創出をめざすプレイス・ブランディング
「地域ブランド」の創出
生まれ育った地域や、住んでいるエリアが、経済的にも社会的にも文化的にも豊かな価値を有することは、人が生きる環境として望ましいものです。特に人口の減少と急速な高齢化に苦しむ地方にとって、地域の活力を取り戻すことは切実な課題であり、さまざまな試みが行われています。
例えば、2006年に始まった「地域団体商標制度」もその1つです。これは、地域の特産品などの商標登録に際して、地域の名称をつけることを容易にし、「地域ブランド」として保護しやすいようにする制度です。これをきっかけとして、特産品を使った「地域ブランド」の認知が進み、多くの人に「地域ブランディング」が認知されるようになりました。しかし未だに地方の課題は存在し続けています。
「プレイス・ブランディング」への展開
地域のブランディングには、企業が行うマーケティングの考え方が取り入れられてきました。企業が自社製品をブランド化するときの手法を地域の活性化に適用する試みです。近年は特産品などのモノにフォーカスするだけでなく、人々の多様な取り組みも含めた地域の新たな価値づくりが重視されています。それを踏まえ、地域の空間全体を視野に入れて、経済的な価値だけでなく、社会的・文化的な価値の創出をめざす「プレイス・ブランディング」という考え方に注目が集まっています。プレイス(place)は、「場・場所」という意味です。
「ジョンソンタウン」のケース
埼玉県入間(いるま)市の「ジョンソンタウン」が、米軍人用住居だった米軍ハウス跡地のユニークな再開発として知られています。この地はかつて米軍のジョンソン基地が存在した「プレイス」であり、その歴史的・空間的な意味や価値をとらえながら、新たなまちづくりが行われました。家の配置をアメリカ式に整備した独特の景観は、観光地としての機能を持ちます。それとともに、住民どうしのコミュニケーションが自然に育まれ、若者、高齢者、海外からの居住者など多様な層をひきつけるプレイスとして発展しているのです。
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先生情報 / 大学情報
駿河台大学 経済経営学部 経済経営学科 准教授 山崎 義広 先生
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