「上に行きたい!」が社会を元気にする

地位や学歴の満足度が経済成長を起こす
古典的・標準的な経済成長理論では、「人々はより多く消費するためにお金を稼ぎ、貯蓄する」とされています。結婚や子育てなど、将来の消費のための貯蓄も同じ動機です。一方、「社会的地位選好」という基準があります。「選好」とは人々が何に対して幸福を感じるかの選択です。ほかの人と比較して社会の中で自分のランクを意識するという競争意識が、その原点です。社会的地位選好では、地位や学歴が高くなるほど幸せを感じる満足度が高いと考えられるため、経済成長を求める動機になり得るのです。
教育や人材育成は「人的資本の蓄積」
右肩上がりの経済発展が見込みにくくなった現代、マクロ経済学の経済成長理論では、社会的地位選好などの新しい視点を加えて考察し、社会の豊かさとは何かを解明しようとしています。そもそも経済成長の源泉は、貯蓄(資本蓄積)、教育・人材育成(人的資本の蓄積)、企業の研究開発・市場創造(技術の進歩)、政府による社会資本投資(公的資本)です。社会的地位選好と経済成長の関係を考察していくと、より高い地位のために貯蓄に励むと、この4つの中の資本蓄積が促進されて、お金が回り、経済が成長するということになります。
勉強を頑張れば、理論的にどうなる?
その地位選好のポイントが、例えば学歴競争であれば、全員がほかの人より高くなるというのは物理的に不可能です。ほかの人と比較して自分が高くはなれません。その努力は無駄になり、難しい言い方をすれば、これを「地位選好の負の外部性」と呼びます。では、だからといって学歴競争は否定すべきかというと、そうでもありません。社会全体に賢い人が多くなれば、能力が高い人たちの中で自分の能力開発をしたほうが、自分の力が伸ばせて、教育水準が高まります。これを教育の経済学で「正の外部性」と言います。そこだけ見ると無駄に見える学歴競争(負の外部性)も、実は教育の「正の外部性」を補うような形になっているのです。
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