講義No.15327 経済学

「上に行きたい!」が社会を元気にする

「上に行きたい!」が社会を元気にする

地位や学歴の満足度が経済成長を起こす

古典的・標準的な経済成長理論では、「人々はより多く消費するためにお金を稼ぎ、貯蓄する」とされています。結婚や子育てなど、将来の消費のための貯蓄も同じ動機です。一方、「社会的地位選好」という基準があります。「選好」とは人々が何に対して幸福を感じるかの選択です。ほかの人と比較して社会の中で自分のランクを意識するという競争意識が、その原点です。社会的地位選好では、地位や学歴が高くなるほど幸せを感じる満足度が高いと考えられるため、経済成長を求める動機になり得るのです。

教育や人材育成は「人的資本の蓄積」

右肩上がりの経済発展が見込みにくくなった現代、マクロ経済学の経済成長理論では、社会的地位選好などの新しい視点を加えて考察し、社会の豊かさとは何かを解明しようとしています。そもそも経済成長の源泉は、貯蓄(資本蓄積)、教育・人材育成(人的資本の蓄積)、企業の研究開発・市場創造(技術の進歩)、政府による社会資本投資(公的資本)です。社会的地位選好と経済成長の関係を考察していくと、より高い地位のために貯蓄に励むと、この4つの中の資本蓄積が促進されて、お金が回り、経済が成長するということになります。

勉強を頑張れば、理論的にどうなる?

その地位選好のポイントが、例えば学歴競争であれば、全員がほかの人より高くなるというのは物理的に不可能です。ほかの人と比較して自分が高くはなれません。その努力は無駄になり、難しい言い方をすれば、これを「地位選好の負の外部性」と呼びます。では、だからといって学歴競争は否定すべきかというと、そうでもありません。社会全体に賢い人が多くなれば、能力が高い人たちの中で自分の能力開発をしたほうが、自分の力が伸ばせて、教育水準が高まります。これを教育の経済学で「正の外部性」と言います。そこだけ見ると無駄に見える学歴競争(負の外部性)も、実は教育の「正の外部性」を補うような形になっているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

龍谷大学 経済学部 現代経済学科 准教授 川元 康一 先生

龍谷大学経済学部 現代経済学科 准教授川元 康一 先生

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経済成長理論

メッセージ

経済学は、お金のことを考える学問というだけではありません。もっと広く解釈すると、身の回りのことから意識してテーマを選び、それが暮らしの中でどんな意味を持っているかを考えていく学問とも言えます。経済活動というフィルターを通して、みんながお金を稼いだり生産したり、消費行動を調べると、いろいろなことに実は意味があるかもしれないと気づける面白さがあります。その視点は社会人になっても役立つでしょう。今生きている世の中を経済の視点から見る学問に、あなたにも挑んでもらいたいです。

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あらゆる「壁」や「違い」を乗り越えるために、「まごころ」を持ち、「人間・社会・自然」について深く考える人を育む。それが、龍谷大学の教育のあり方です。自分自身を省み、人の痛みに感応して、他者を受け容れ理解する力を持つ。人類が直面するリアルな課題と真摯に向き合う。そして様々な学びを通じて本質を見極める目を養い、自らの可能性を広げていきます。