「パブロフの犬」だけじゃない、身の回りの古典的条件づけ
トリガーの刺激で起こる条件反応
「パブロフの犬」という実験を知っていますか? まず、犬はエサを目の前にすると唾液を出します。これは生まれつき起こる反応です。そこで、犬にベルの音を聞かせてからエサを与えます。本来、犬にベルの音を聞かせても特別な反応は起こりません。しかし、ベルを鳴らしてエサを与えることを繰り返していると、犬はベルの音を聞いただけで唾液を出すようになります。これは「条件反応」と言われる現象です。
条件反応とは、学習させた刺激が引き金(条件刺激)となってさまざまな反応が起こることです。これを学習心理学では「古典的条件づけ」と呼んでいます。梅干しやレモンを見ただけで唾が出る、お昼のチャイムが鳴るとおなかが空くなど、人の日常にも多く見られます。
カフェインレスコーヒーでも覚醒作用が?
トリガーとなる要素はさまざまです。例えば覚醒作用があるカフェインもそのひとつです。普段コーヒーを愛飲している人に、カフェインレスのコーヒーを飲んでパソコンゲームをしてもらうと、カフェインを摂取していないのに、水を飲んだ場合よりもゲームの効率がアップしました。つまりカフェインの覚醒作用が現れたのです。また反対にアルコールを日常的に飲む人に、ノンアルコールビールを飲んでゲームをしてもらうと間違いが多くなりました。これはコーヒーやビールに近い匂いや色、味などが引き金となって、条件反応が起こるためです。
広告マーケティングにも使われる古典的条件づけ
古典的条件づけはアルコールなどの嗜好(しこう)品だけでなく、広告のマーケティング戦略にもよく使われます。例えば、好感度の高いタレントを使ってお茶のCMを繰り返し流すことで、元々は好きでも嫌いでもなかったお茶の好感度を高め、購買意欲をかき立てています。
このように学習心理学の古典的条件づけを応用したものはたくさんあります。ただ、当たり前になりすぎて気づかないだけなのです。心理学の目線で、周りに潜むいろいろな引き金を探せば、その背景にある意図も見えてくるはずです。
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北海道医療大学 心理科学部 臨床心理学科 助教 福田 実奈 先生
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