インセンティブが意識を変える? 経済学的観点による健康促進
自治体での導入が進む健康ポイント制度
2014年から、健康寿命の延伸を目的として全国の自治体が「健康ポイント制度」を導入しています。これは、健康づくりプログラムへの参加や日々の運動といった「健康に良いこと」をすると、商品券や健康グッズ、特産品などと交換できるポイントが付与される制度です。この制度に対し、どういう人が参加してくれるか、どれくらいのポイントでどれくらい努力してくれるか、制度を利用した人がどれくらい健康になるかなどの統計を取り、経済学の観点から分析することで制度の改善の余地を探ります。
インセンティブの活用で行動変容を起こす
健康ポイント制度において、付与される健康ポイントは「インセンティブ(動機付け・誘因)」にあたります。ポイントによって意欲をかきたて、本来の目的である健康寿命の延伸の達成をめざします。「成績が良かったらお小遣いがもらえる」という家庭内でのルールにおいても、インセンティブが活用されています。ただ、インセンティブが当たり前になると、それなしでは努力しないということも起こり得ます。基本的にインセンティブは「長期的に見てプラスになるけれど、なかなか行動に移せないこと」において有効なものだと言えます。
社会の負の連鎖を断ち切るヒント
健康ポイント制度の調査では、運動習慣がない・タバコを吸う・お酒をよく飲むなど、本来参加してほしい人ほど参加率が低いという結果が出ました。また、ポイントが2倍になれば2倍努力してくれるというわけでもありませんでした。制度の改善が必要でしょう。また、どれくらい健康になるかということについては短期的な判断は困難で、20年、30年と追跡調査をしていかなければなりません。
健康を損なうと働くことが難しくなり、貧困、それにともなう進学の断念、生活の質の低下といった負の連鎖に、家族や子どもを巻き込んでしまうこともあります。経済学は、そういった社会・個人の負の連鎖を断ち切るヒントを得るための学問でもあるのです。
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甲南大学 マネジメント創造学部 准教授 上村 一樹 先生
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