国際空港ができた効果を地図とデータで検証すると?
地理情報システム「GIS」とは
1994年に開港した関西国際空港は、周辺地域にどんな影響をもたらしたのでしょうか。人の往来が増えることによる経済効果や、関連施設で働く人の雇用増加などの効果を、地図と空間データを組み合わせた技術「地理情報システム(GIS:Geographic Information System)」で検証した研究があります。GISのデータのひとつ「メッシュデータ」は、地図を緯度と経度で格子状(メッシュ)に区切り、そこに人口や事業所数といったデータの分布を表示したものです。国が定める国土数値情報では、メッシュが縦横それぞれ約80km・10km・1km・500 mの範囲で区切られてデータが提供されます。さらにそのメッシュデータを時系列で示すことで、変化が視覚的に表現できるのです。
データによる検証の必要性
メッシュデータを用いて細かく検証することで、さまざまな指標が、どのエリアでいつから変化したかが可視化されます。関西国際空港周辺の人口は、大阪国際空港周辺よりは増えたものの、産業は旧空港周辺の方が増えたことも明らかになりました。また、成田国際空港周辺や中部国際空港周辺でも同様のデータを用いて、比較検証も行われました。国際空港のような大規模施設をつくるとき、周辺住民にはメリットが強調されがちです。巨額の予算が投じられ、住民への影響も大きな事業こそ、客観的なデータによる検証が必要です。
住所は意外とあてにならない?
この研究で、地域の変化を時系列で表現する際にあぶり出されたことがあります。例えば、地価は「〇〇市△△町」といった「住所」にひも付けられており、平成の市町村合併で住所が変わった地域は、合併前後の直接比較ができないのです。メッシュデータ上で比較するためには、「住所」を「緯度と経度」に置き換える必要がありました。これは、緯度と経度に基づくメッシュデータは、市町村合併といった行政の変化の影響を受けないという利点があるのです。
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大阪経済大学 情報社会学部 情報社会学科 教授 草薙 信照 先生
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