皮膚の下を透視? 理学療法士が持つ「触れる目」のヒミツ

体の表面を触って体内の構造を理解する
理学療法では、患者の体を外から触って、皮膚の下にある筋肉や骨、神経などを正確に触り分ける「体表解剖学」の知識や技術が活用されています。体表解剖の目的は、正確に評価して適切な治療につなげることであり、痛みがある場合はその原因を見極めることです。臨床の結果が大きく変わるほど、理学療法には欠かせない基礎的な技術です。
触った感覚をどう身につける?
体表解剖の技術を習得するのは容易ではありません。そもそも、3次元のヒトの体の構造を2次元の解剖図だけで理解するのは難しく、教科書を読むだけではとても習得できません。最近は動画学習も増えてきて、手の動かし方は学びやすくなりました。しかし触ったときの感覚を知るには、一緒に触りながら教わるのが一番です。確かな技術を持つ経験者と一緒に実際に触れながら正しい位置を教わると、劇的に技術が向上することがわかっています。この体験で筋肉や骨、神経などの感触や部位による違いを実感し練習することで、ほとんど間違えずに触り分けられるようになります。それが正確かどうかは、今は超音波診断装置(エコー)で確認できるため、学習者はより確かな自信を持って技術を習得できるようになりました。
繊細に触り分ける技術があれば
臨床やスポーツ現場では、大まかな位置がわかれば十分という考え方もありますが、繊細に触り分ける技術があることで治療できる痛みもあります。例えば、腰痛は「非特異的腰痛」という原因が特定できていないものが全体の85%を占めているといわれます。通常の治療ではストレッチングなどを行って、痛みが和らぐ可能性はあります。しかし、その痛みの原因が筋・筋膜であるなら、この技術によってピンポイントで痛みの原因の部位を見極めて、適切な圧迫刺激を与えることで痛みを完全に取り除ける場合があります。体表解剖の技術は、ほかの方法では解決できなかった痛みも解消できる、そんな可能性を秘めています。
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