外交史を知れば、台湾の魅力がもっとわかる
魅力的な台湾を外交から考える
日本から近く、タピオカでも有名な台湾は、人種も言語も多彩でエネルギーにあふれています。一方、歴史を見れば中国や日本など周辺国からの影響を大きく受けてきました。なかでも重大な出来事は、1971年の国連からの退出です。中国を代表する政府をめぐる争いに敗れてのことでしたが、規模的に小さい台湾が国際舞台から退くのは得策ではないととらえられました。しかし、ここに台湾の政府ならではの合理的な考え方があったのです。国連で中国と台湾が同時に加盟する状態が生じても、中国は何かの方法ですぐに台湾を追い出そうとするでしょう。そうだとすれば台湾が妥協できる線はどこになるでしょうか。国連から出たことには批判も多いのですが、結果としては将来に可能性を残すことになったと言えるかもしれません。
消えた選択肢などプロセスを読み込む
外交史の研究では、政府の声明や条約などだけではなく、話し合いを記録や日記なども資料となります。書類を一枚ずつめくりながら解読する作業です。興味深いのは、同じ会議の記録でも立場によって書き残した中身が違うことがあり、それらを寄せ集めて突き合わせ、何が現場で起きたのかを検証していく必要があります。また外交史の研究では教科書に載っているような結果ではなく、プロセスのなかで消えた選択肢を見つけ、誰がどんな発言をしていたかを探り、思考などを読み解きます。
蒋介石は独断ばかりではなかった!?
こうしてわかったことの一つに、当時台湾にあった政府のトップリーダーである蒋介石(しょうかいせき)のエピソードがあります。大きな権力をもち、独断で物事を決める人物のように考えられていて当時の日本も蒋介石がどう考えているのかに注目していました。しかし記録を手繰ると、さまざまな決断のプロセスには何人もの重要人物が参加し、議論し、蒋介石がすべて思うままに決めていたわけではないことが分かります。このように歴史をさかのぼり、外交の見えにくいプロセスを知ることは、未来の外交のヒントになるのです。
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麗澤大学 外国語学部 外国語学科 教授 清水 麗 先生
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