福祉サービスと市民をつなぐ「社会福祉士」
日本の社会福祉
「社会福祉」という用語が日本で初めて公的に用いられたのは1946年に成立した日本国憲法の第25条2項です。戦後から現在に至る過程で市民のニーズも複雑多様化していきました。例えば、貧困問題は単なる経済的な困窮状態ではなく、社会生活における様々な環境から排除されていく過程から陥るものと捉えることができます。生活に困窮した場合、地縁血縁、さらには公的保険や福祉制度の利用などで切り抜けようとするでしょう。しかし、申請に至らない、サービスを利用できないといった「制度・サービスからの排除」、制度を知らない、申請できることを知らないといった「情報環境からの排除」、家族や友人を頼れない「コミュニティからの排除」など様々な環境要因が複雑に絡み合って、自己解決能力を超える問題として貧困状態が起きるのです。
憲法を具現化する福祉サービス
生活困窮状態から市民を救うために、「生活保護法」「児童福祉法」「身体障害者福祉法」など福祉六法が定められています。さらに、現代の社会状況に即して「介護保険法」、「障害者総合支援法」、「生活困窮者自立支援法」など多くの法律が制定されています。それらの法律を具現化するために、公的機関では福祉事務所や児童相談所、民間では社会福祉協議会や社会福祉法人などが福祉施設や事業所を設置し、各々に福祉専門職が配置され、市民のもとにサービスが届けられているのです。
「社会福祉士」の役割
危機的な状況というものは思いがけずに突然やってくるものす。その時になって冷静に状況分析して、適切な制度やサービスを探すことは困難です。「社会福祉士」が生活困難・困窮者と福祉サービスをつなぐ役割をしています。相談を受けた社会福祉士は、話を聴いた上で絡み合った問題をひもといて整理し、どこでどのような制度が使えるかを助言し、実際のサービスにつないでいきます。相談者の生活や人生を支える責任のある立場であり、高度な専門性と市民からの信頼が必要とされ、社会福祉士は国家資格として制定されているのです。
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美作大学 生活科学部 社会福祉学科 教授 武田 英樹 先生
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