モヤモヤした感覚から自分の気持ちを導き出す

モヤモヤした感覚から自分の気持ちを導き出す

食べたいものを決める前のモヤモヤとした感覚

おなかが空いたとき、わたしたちはモヤモヤと言葉にできない思考から始まって、最終的に「今日はおそばが食べたい!」などといった答えを導き出します。この時に友人から「今日は寒いからカレーを食べに行こう」と誘われても、「なんだか違うな」「寒くても今日はさっぱりしたおそばが食べたい」と感じると今ひとつ乗り気になれません。ここで友人に合わせてしまうと、自分の感覚に従わず少し無理をしているような状態になります。この時のモヤモヤした感覚のことを「フェルトセンス」といい、自分のフェルトセンスと向き合うことを「フォーカシング」といいます。

ゆっくりと自分のモヤモヤを探っていく

フェルトセンスやフォーカシングは、日常生活のさまざまな場面に存在しています。例えば、不登校の子がモヤモヤと「学校に行くのがつらい」と感じていても、実際に何が嫌なのかモヤモヤとした感覚の理由は本人にもなかなかわからないものです。なぜ動けないのかは、自分の心や身体が知っているかもしれません。家族や周囲の人は、その子を急かすのではなくゆっくりと話を聞いて寄り添い、一緒にフェルトセンスに向けてフォーカシングすることが望ましい形です。身体の感じにフォーカスしていくことで、「遅れて行った時に周りから注目される感覚が嫌なんだ」というような本来の気持ちが言葉になって現れてくることがあります。

自分の心を見つめ、自分との信頼関係をつくる

フォーカシングで自分の気持ちを言葉にできるようになると、自分の状況が見えるようになってきます。自分の意思を表現することは心の癒やしと自信にもつながり、問題の解決にも一歩近づきます。
この概念が日本に導入されて何十年かたちますが、その重要性はまだあまり知られていません。フォーカシングは特別な心理療法の技法ではなく、人が自分自身の心と身体を見つめる行為なので、誰にとっても必要な心の基盤になると考えられます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

龍谷大学 心理学部  教授 内田 利広 先生

龍谷大学 心理学部 教授 内田 利広 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

心理学

メッセージ

まわりの人々との関わり合いから「人間って不思議だな」と感じ、心理学に興味を持つ人は多くいます。しかし、自分の心に興味・関心を持つことも重要です。自分の経験をしっかりと咀嚼(そしゃく)して消化しなければ、誰かを支援する時につまずいてしまうことがあります。人の心を学ぶには、子どもから高齢者まで幅広い年代の人たちと関わる機会を持って、素直な気持ちで接してみましょう。また、言葉以外の非言語コミュニケーションは、カウンセラーになる上でもとても良い経験になります。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

龍谷大学に関心を持ったあなたは

『進取と共生』~世界に響きあう龍谷大学~
龍谷大学は、380年の伝統を超え、新たな一歩を踏み出しました。
その歴史は、江戸時代初期の寛永16年(1639)、京都・西本願寺に、仏教の研究と人材養成のための「学寮」が設けられたことに始まります。
そして、近世から近代、現代への日本の歴史の中で新しさを重ねて380余年。現在では京都・滋賀の3つのキャンパスに、10学部・21学科6課程、大学院を擁する、全国屈指の総合大学として、発展を続けています。