人の心に寄り添う看護師を育てるために

リフレクションの重要性
看護の現場では、学んだ知識をそのまま使うだけでは対応できないことがあります。患者一人ひとりの状況や背景が異なるために、それぞれに合わせた看護が求められるからです。こうした場面では、経験から身につけた実践知が重要です。しかし実践知は目に見えず、他人に簡単に教えられるものではありません。そこで、自分の行動や考えを振り返る「リフレクション」という方法が使われています。リフレクションでは、自分の行動や発言、当時の気持ちを客観的に見つめ直し、そこから新たな学びを得ることをめざします。
ファシリテーターの育成
リフレクションを支える存在が「ファシリテーター」です。看護の現場では、主に先輩がファシリテーター役となり、後輩に対して「どうしてそう思ったか」「どんな気持ちだったか」と問いかけながら、一緒に考えを深めていきます。ファシリテーターは、答えを教えるのではなく、相手が自ら気づきを得られるようにサポートする役割を担います。
しかし経験豊富な先輩ほど、自分の経験もとに答えを提示してしまうことも少なくありません。そこで、相手の話をじっくり聞いて、見守る姿勢を育むための研究が進められています。例えば、自分がファシリテーターになった場面をビデオで振り返り、教育の専門家と一緒に客観的に見直す取り組みなどがあります。
看護教育の未来
さらに、ICTを用いたシミュレーション教材の開発も進められています。画面に登場するアバターが話しかけてきて、それにファシリテーター役が応答する形式です。この方法なら、対人関係のリスクを気にせずに何度も練習できます。
こうしたICTの活用によって教育効率の向上が期待できますが、一方で看護においては、人と人が向き合う中でしか得られない学びがあります。信頼し合い、励まし合う関係は、機械では代替できないからです。これからの看護教育では、人が人を育てる伝統的な学びと、最新のテクノロジーをバランスよく取り入れることが求められています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
