講義No.15096 看護学 教育

人の心に寄り添う看護師を育てるために

人の心に寄り添う看護師を育てるために

リフレクションの重要性

看護の現場では、学んだ知識をそのまま使うだけでは対応できないことがあります。患者一人ひとりの状況や背景が異なるために、それぞれに合わせた看護が求められるからです。こうした場面では、経験から身につけた実践知が重要です。しかし実践知は目に見えず、他人に簡単に教えられるものではありません。そこで、自分の行動や考えを振り返る「リフレクション」という方法が使われています。リフレクションでは、自分の行動や発言、当時の気持ちを客観的に見つめ直し、そこから新たな学びを得ることをめざします。

ファシリテーターの育成

リフレクションを支える存在が「ファシリテーター」です。看護の現場では、主に先輩がファシリテーター役となり、後輩に対して「どうしてそう思ったか」「どんな気持ちだったか」と問いかけながら、一緒に考えを深めていきます。ファシリテーターは、答えを教えるのではなく、相手が自ら気づきを得られるようにサポートする役割を担います。
しかし経験豊富な先輩ほど、自分の経験もとに答えを提示してしまうことも少なくありません。そこで、相手の話をじっくり聞いて、見守る姿勢を育むための研究が進められています。例えば、自分がファシリテーターになった場面をビデオで振り返り、教育の専門家と一緒に客観的に見直す取り組みなどがあります。

看護教育の未来

さらに、ICTを用いたシミュレーション教材の開発も進められています。画面に登場するアバターが話しかけてきて、それにファシリテーター役が応答する形式です。この方法なら、対人関係のリスクを気にせずに何度も練習できます。
こうしたICTの活用によって教育効率の向上が期待できますが、一方で看護においては、人と人が向き合う中でしか得られない学びがあります。信頼し合い、励まし合う関係は、機械では代替できないからです。これからの看護教育では、人が人を育てる伝統的な学びと、最新のテクノロジーをバランスよく取り入れることが求められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

大阪医科薬科大学 看護学部  教授 池西 悦子 先生

大阪医科薬科大学看護学部 教授池西 悦子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

看護教育学

先生が目指すSDGs

メッセージ

学習とは、単に知識を記憶するだけでなく、経験を通じて新たな発見を得ることも含まれます。
高校生活で積み重ねる経験は、あなたの強みとなり、人生を豊かにします。重要なのは、その経験を振り返り、次に生かすことです。挑戦には不安が伴うかもしれませんが、勇気を持って一歩を踏み出してください。失敗も次につながる学びです。人生は長く、挑戦を続けることで大きく成長できます。知識だけでなく、日々の経験から学び、それを未来へとつなげていくことが、大切です。

大阪医科薬科大学に関心を持ったあなたは

2021年4月、大阪医科大学と大阪薬科大学は大学統合を行い、医学部・薬学部・看護学部を有する本邦有数の医療系総合大学「大阪医科薬科大学」としてスタートしました。
今後、医学部生、薬学部生、看護学部生がともに学べる学習環境を確立し、「医薬看融合教育」を更に発展。現代のチーム医療における医師、薬剤師そして看護職者としての役割を学生時代から強く意識できる恵まれた医療教育の環境の中、社会に貢献できる高度医療人を育成します。