アラスカのサケ漁業から見えてくる、アメリカの別の顔とは?
アメリカは本当に自由と平等の国?
アメリカといえば、「自由」「平等」「民主主義」などといったイメージが思い浮かぶかもしれません。しかし、歴史をひも解いてみると別の顔が見えてきます。例えば、19世紀半ば以降にアメリカの領地となったアラスカ州ですが、ここには先住民が住んでいて、自分たちが生きていくためだけにサケ漁業を行っていました。ところがアメリカの領地なって本土から白人漁師が移ってくると、先住民の漁場を奪い、自分たちのものにしてしまったのです。
持ち込んだのは資本主義と植民地的支配
白人漁師たちは、暴力や金銭を利用し、政府に働きかけて自分たちに都合の良い法律をつくり、植民地的支配で先住民を抑圧しました。豊かなサケ漁場についても、先住民たちはコミュニティ全体のものと考えていましたが、白人漁師はそれを私的に所有し、サケを大量に獲って利益を上げるという「資本主義」のやり方を持ち込んだのです。それはアメリカ本土で先住民の土地を奪って、何もない南西部の砂漠地帯などに居留地(リザベーション)を造り、先住民を追いやった行為と全く同じです。また1930年代当時、誰でも自由に漁ができた北洋の海域で、サケ漁をしにきた日本の漁師たちに対してアラスカの白人漁師が「侵略者だ」と訴え、両国の関係が不穏になったこともありました。漁業は日米関係にも影響したのです。
アメリカを理解すると日本や世界が見えてくる
私たちの身近にある「ファストフード」「コンビニ」「テーマパーク」「スポーツ」「音楽」「映画」「ファッション」などの多くは、アメリカからやってきたものです。現在、日米が同盟関係であるように、日本にとってアメリカは最も近くて重要な国だと言えるでしょう。ただアメリカの一面として、自国の利益のために植民地的支配を行う「帝国主義」が根付いていることも確かです。アメリカを多角的に理解することで、その観点から私たちは日本の現状や、世界の現状を知ることができるのです。
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大阪大学 外国語学部 外国語学科 英語専攻 講師 伊藤 孝治 先生
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