小さくて強力な超電導の磁石を実現する
強い磁場を生み出す超電導技術
超電導とは、単体の金属や化合物などを極低温に冷やすと電気抵抗がゼロになる現象です。この電気抵抗がない超電導の状態で、大きな電流を流し続けて強い磁場を発生させられることを生かした「超電導電磁石」が実用化されています。しかしこれは大きなコイルを極低温に保つ必要があり、真空容器を備える大がかりな装置となります。一方、私たちが日常的に使っている永久磁石は弱い磁場しか発生させられませんが、小型で使いやすく自由に組み換えが行える長所があります。
小さくて強い磁石を作る
超電導体を焼き固めた「超電導バルク結晶」を使って、小さくても電磁石並みの強い磁場を発生できる磁石が開発されました。これは、電磁誘導を利用して電流を誘起する「着磁」というプロセスにより、バルク内に高密度の電流と磁場を閉じ込める方法を用いて、磁石のような働きを持たせたものです。いくつかの超電導バルクを組み換えることでN極とS極の配列を工夫する「磁気設計」という技術を用いて、磁気浮上装置も開発されています。この装置の強力な磁場の下では、普段は永久磁石に反応しない物体であっても大きな反発力を受けて、重力の影響を無視して空中に浮き上がる不思議な現象が見られます。
海洋にある資源とエネルギー源の活用
日本を囲む広大な海洋には未利用の資源が眠っています。それらは、レアメタルのような鉱物資源であったり、風力や潮流などのエネルギー資源であったりと様々です。電気エネルギーを得るための発電技術では電磁誘導を利用しますが、超電導体を用いれば強い磁場から大きな発電出力が得られると期待されます。また、ものづくりの原料となる鉱物を磁場で浮上させることによって特定の金属を円滑に分離・回収できれば、循環型社会において資源を有効に利用するための新しい選別技術になるかもしれません。このように、小型で強力な超電導バルク磁石が磁気設計によってさらに使いやすく高性能になれば、磁場を利用する多様な電磁応用の可能性が広がるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 助教 高橋 圭太 先生
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