患者の「くらし」や「自分らしさ」を支える医療ソーシャルワーカー
傷病の治療は終わったけれど……
救急搬送された患者の多くは、傷病の治療が終われば退院し、これまでの日常生活に戻ります。ところが、患者が抱える問題は、傷病のことだけではありません。例えば、医療費や生活費、家族や学業・仕事に関すること、退院後の介護など、患者はさまざまな生活課題を抱えることがあります。また、突然の傷病によって新たな課題が生じることも少なくありません。このような状況において、医療機関で社会福祉の立場で相談支援を行い、さまざまな関係機関と連携することで、患者の「くらし」や「その人らしさ」を支えるのが「医療ソーシャルワーカー」です。
医療機関におけるソーシャルワーク
社会福祉を担うソーシャルワーカーが、福祉の現場だけでなく医療機関で「医療ソーシャルワーカー」として活動するケースが増えています。経済的な不安や身寄りがないといった困りごとを抱える患者に対して、医師や看護師などの医療専門職ではケアしきれない、患者の生活を支える役割です。2006年以降、社会福祉士が診療報酬制度で評価されたことで、医療機関もソーシャルワーカーを積極的に採用しやすくなりました。それでも、救急搬送された患者に対して、医療ソーシャルワーカーが支援するケースは患者全体の1~5割ほどと、各医療機関の体制によってばらつきがあります。そのため、まだ必要とする患者に十分な支援が届けきれていないと指摘する研究者もいます。
医療ソーシャルワーカーに必要なもの
アルコール依存症や虐待といった外部に表れにくい問題に対して、救急搬送は福祉との究極のタッチポイントとも言えます。救急搬送された患者から困りごとを打ち明けられたり、虐待などのサインをとらえたりする医療ソーシャルワーカーには、高い面接技術や観察力が必要です。さらに患者や家族の不安に寄り添う力や判断力、関連部門とのコミュニケーション力など多様なスキルが求められます。需要が高まる医療ソーシャルワーカー育成のために、現場の知見を共有する動きも活発に行われています。
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先生情報 / 大学情報
文京学院大学 人間学部 人間福祉学科 ソーシャルワークコース 准教授 篠原 純史 先生
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