中国の歴史から見えてくる! 人々の暮らしと現代へのヒント

中国の歴史から見えてくる! 人々の暮らしと現代へのヒント

石炭を使い続ける理由

中国の歴史と聞くと、始皇帝や三国志などを思い浮かべるかもしれません。しかし、歴史は有名な人物だけでなく、日々の生活を営む人々からも成り立っています。
中国では、環境問題が叫ばれる現在も石炭を使っており、日本もそれを輸入しています。16世紀から19世紀の近代史を検証すると、中国には燃料となる木材が少ないため、大量にある石炭を使うようになりました。日本は国土に占める森林面積が60〜70%ほどありますが、中国は当時8〜12%ほどしかありませんでした。植林してもすぐに燃料として使ってしまい、森林は育たなかったのです。1990年代から環境問題への関心が高くなって政府は対応しましたが、庶民は石炭を使い続けました。石炭は安価で使いやすいからです。

そこに住む人々の歴史

木材が少ない理由は、山地に住む人が増えて森林が開発されたからという経緯もあります。多くの人は安定した暮らしを求めて平地に住みますが、事業に失敗するなどした貧困層は山地へ移り住みました。山を切り開くと、土石流などの災害が発生しやすくなります。地域の有力者が災害対策をしましたが、十分とはいえません。
また、石炭を掘る鉱山周辺では、酒蔵ができ、昆虫食といった食文化が発達しました。こうした、その地に住む人の様子は、当時の裁判記録といった史料を検証することで明らかになります。

より良い社会づくりのヒントに

一般の人々の歴史を検証すると、今も昔も、中国でも日本でも人間がとる行動はあまり変わらないことがわかります。日本でも今、ゴミ問題やリサイクルなどはうまく機能せず、山を開発して災害が起き、その都度対応することを繰り返しています。
こうした検証は、社会史や環境歴史学といった学問領域で行われます。これらは私たち一人一人がどう生きるべきかという多くのヒントを与えてくれます。より良い社会をつくるには何が課題であり、どんな政策が必要かも見えてきます。歴史から学ぶことが大切なのです。

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先生情報 / 大学情報

大正大学 文学部 歴史学科 教授 宮嵜 洋一 先生

大正大学 文学部 歴史学科 教授 宮嵜 洋一 先生

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中国近世・近代史学

メッセージ

教科書に書かれていることは、歴史のほんの一部です。歴史の中には私たちと同じように普段の生活を営んでいる人々がいて、歴史の表舞台に出ない人々がいます。そしてその暮らしぶりは現在の人々や生活ともリンクしています。時代の変化に伴い、外交、環境、感染症、ジェンダーなど、さまざまな問題が起こります。まずは、ニュースや報道に敏感になり、またそれらをうのみにすることなく、本当は何があるのか考えて、その背景に広がる状況やそこにいる人々に意識を向けてみてください。あなたの視野を広げるきっかけとなるでしょう。

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大正大学は大正15(1926)年に設立された、2026年に100周年を迎える伝統のある大学です。6学部10学科の学問分野で文学や心理、歴史、メディアなど、多彩な学びを展開し、地域社会に貢献できる人材を目指します。キャンパスは東京都豊島区にあり、池袋・巣鴨からもアクセスしやすい立地です。全学部が4年間を同じキャンパスで過ごします。また、1学年約1200名の学生に対し、教員は154名。教員1人あたりの1学年の学生数が7.8名と、教員との距離が非常に近いことも特徴です。