生活者の経験や体験を「デザインする」ということ

生活者の経験や体験を「デザインする」ということ

デザインの役割の変化

産業の分野では「デザイン」がさまざまな役割を果たしています。工業製品などのプロダクトデザインにおいてはモノの色や形、仕上がりといった「印象のデザイン」が求められます。また、ボタンの押しやすさ、目や手先が不自由な人にとっての使いやすさといった「ユーザビリティ」は、プロダクトデザインだけでなく、情報やネットのサービスといった「情報デザイン」「インタラクションデザイン」においても非常に重要です。一方で、モノやサービスがあふれかえる今の社会では、「良い機能」をデザインするだけで生活者を満足させることは困難です。そこで20年程前から重視されるようになったのが、「経験(体験)のデザイン」です。

経験(体験)をデザインする

経験(体験)のデザインとは、言い換えれば時間軸を伴った「生活者の物語」のデザインです。例えば私たちは遊園地で遊ぶ際、乗り物やイベントを楽しむだけではなく、事前にチケットを購入し、何らかの交通機関でアクセスして、食事をしたり、帰る前にはお土産を買ったりします。このように、遊園地に行く前、遊んでいるとき、後にしたときという長い時間軸の中で、生活者がどんなことを経験しているのかをつかみ、それぞれの場面ですばらしい価値を提供することで、遊園地が提供するサービスの質を高められるのです。
経験(体験)のデザインには、ビジネスの要素も重要です。特に「実現性」「実行性」「受容性」「持続可能性」の4つの要素を掛け合わせることで、誰かに望まれるようなサービスを届けることができます。

これってこういうこと?

経験(体験)のデザインに限らず、何かをデザインするということは「まだ存在しないものを、そこにあるかのように描き出し、それを共有できるようにすること」にほかなりません。人とのつながりの中でさまざまな課題を共有し、「これってこういうこと?」とその解決策を絵や言葉で表して、それをみんなに共有することこそが、デザインのもつ大切な役割なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

武蔵野美術大学 造形構想学部 クリエイティブイノベーション学科 教授 丸山 幸伸 先生

武蔵野美術大学 造形構想学部 クリエイティブイノベーション学科 教授 丸山 幸伸 先生

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デザイン方法論、人文社会科学

メッセージ

本学に通う学生から「私は絵を描くのが苦手です」という相談を受けることがありますが、私は決まって「誰が上手に描けと言いましたか?」と返します。本学で学ぶ上で、絵が上手ではないということは何ら気にする必要はありません。それよりも大切なのは、新しいものをつくりたい、美しいものをつくりたいという気持ちと、その気持ちに見合った努力です。その二つがあれば、あなたに必要な力は必ず備わりますし、私たちも全力でそのサポートを行いたいと考えています。

武蔵野美術大学に関心を持ったあなたは

武蔵野美術大学が教えるのは絵の描き方ではありません。目の前にある物事をどうとらえ、そこから何を見出し、どのように社会に還元するか、生きる上での指針となる学びを提供します。
卒業生はこれまでに約6万名を数え、その活躍の場も、美術・デザインの世界にとどまらず、建築や映像、演劇、音楽へと広がりを見せ、「ムサビ」の愛称とともに高い評価をいただいています。
未来に無限の可能性を秘めた皆さんを私たちは歓迎します。