魚の育種で食料危機を乗り越えろ! 遺伝子で未来を変える技術

養殖は「育てる」、育種は「改良する」
私たちが食べている多くの農産物や畜産物は改良品種ですが、魚介類の多くは例外的に天然のままです。一方、海外では魚の品種改良が進んでおり、ノルウェーのサーモンなどは何世代も改良されて養殖に最適化されています。
養殖と育種は全く違う技術です。養殖とは、魚を人の手で育てて大きくすることです。育種とは、より良い性質を持つ魚を作り出す技術です。良い親を選んで交配し、何世代にもわたって望ましい個体を選び続けます。しかし日本では専門家が少なく、魚の育種が遅れています。
ゲノム情報で最適な親魚を選ぶ
最新の育種では、魚のゲノム情報を解析して優秀な親を選んでいます。少ない餌で早く成長する遺伝子、病気に強い遺伝子を持つ魚を科学的に選別するのです。これは人間の病気リスク検査と同じ技術を魚に応用したものです。見た目だけではわからない遺伝的な能力を正確に判定できて、精密な品種改良が実現できます。例えば、通常より30%早く成長する魚や、病気に強い魚などを開発することが可能です。このような遺伝子を活用した育種は、従来の育種にはない技術革新です。
食料問題解決への貢献
世界的な食料需要の増加に対し、海洋資源の枯渇が深刻化しています。天然魚の漁獲量は既に上限に達しており、養殖による食料生産の拡大が不可欠となっています。しかし従来の養殖だけでは生産性に限界があります。魚の育種技術を活用することで、同じ環境でもより多くの魚を効率的に生産できるようになります。ブリ類、タイ類などの主要養殖魚でも海外で育種が進められており、国際競争が激しくなっています。日本が育種技術で遅れをとれば、将来的に魚の多くを輸入に依存することになりかねません。近年の遺伝子解析技術の進歩により効率的な育種が可能になっており、日本でも育種の未来を切り開く可能性が広がっています。この分野の発展は日本の食料安全保障にとって極めて重要であり、新たな人材の参入が期待されています。
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