柔道整復学+バイオメカニクスで、治療や予防医療の充実へ

手術・投薬をしない治療
柔道整復師は、けがの治療や予防をする国家資格の医療従事者です。骨折や捻挫といったけがを、手術や薬以外の方法を使って治療します。具体的には、手技で関節や骨を元の状態に戻す、包帯やテーピングで固定するといった施術です。
病院のような分業ではなく、一人の柔道整復師が診断、治療、リハビリ、その後のケアまでトータルに関わるのが特徴です。手術痕を残さない治療ができ、筋力回復などリハビリ後のケアや、けがの予防などに対応します。
体のメカニズムを科学的に理解
治療には、けがのメカニズムや体の機能などを明らかにする「バイオメカニクス」が不可欠です。例えば、足首が捻挫する瞬間の映像をみると、骨が2段階で動いて起こることがわかります。素足の場合と包帯などで固定した場合を比較すると、固定したほうが捻挫しにくく、予防効果が高いことも立証されています。
また、ひざの前十字靭帯(じんたい)を切ると、太ももの筋肉が落ちたり、筋力が弱まったりします。筋肉の動きがわかる微弱な電気信号(筋放電量)を調べると、たとえ手術しても100%の筋力回復は難しいことがわかっています。さらに、脳(中枢)への信号が変化し、手足の位置などを認識する感覚が減弱することもあります。柔道整復師は、それらも把握した上で、できる限り回復するよう治療します。
予防医療も着目される
高齢者やアスリートは、けがの予防が重要です。柔道整復師は、その人の体の使い方をみて、けがをするリスクを予測することが可能です。特にスポーツでは、同じけがを繰り返さないように、体の使い方を指導する「アジリティトレーニング」で予防に努めることが大切です。今の日本は、予防医療は確立していませんが、柔道整復師が増えれば、けがの予防医療の充実が期待できます。
こうした力をもつ柔道整復師は近年、注目されています。病院の整形外科やリハビリ、接(整)骨院、デイサービス、スポーツチームのトレーナー、パーソナルトレーナーなど、活躍の場は広がっています。
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先生情報 / 大学情報

東京有明医療大学保健医療学部 柔道整復学科 教授櫻井 敬晋 先生
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