講義No.15178 医療技術

柔道整復学+バイオメカニクスで、治療や予防医療の充実へ

柔道整復学+バイオメカニクスで、治療や予防医療の充実へ

手術・投薬をしない治療

柔道整復師は、けがの治療や予防をする国家資格の医療従事者です。骨折や捻挫といったけがを、手術や薬以外の方法を使って治療します。具体的には、手技で関節や骨を元の状態に戻す、包帯やテーピングで固定するといった施術です。
病院のような分業ではなく、一人の柔道整復師が診断、治療、リハビリ、その後のケアまでトータルに関わるのが特徴です。手術痕を残さない治療ができ、筋力回復などリハビリ後のケアや、けがの予防などに対応します。

体のメカニズムを科学的に理解

治療には、けがのメカニズムや体の機能などを明らかにする「バイオメカニクス」が不可欠です。例えば、足首が捻挫する瞬間の映像をみると、骨が2段階で動いて起こることがわかります。素足の場合と包帯などで固定した場合を比較すると、固定したほうが捻挫しにくく、予防効果が高いことも立証されています。
また、ひざの前十字靭帯(じんたい)を切ると、太ももの筋肉が落ちたり、筋力が弱まったりします。筋肉の動きがわかる微弱な電気信号(筋放電量)を調べると、たとえ手術しても100%の筋力回復は難しいことがわかっています。さらに、脳(中枢)への信号が変化し、手足の位置などを認識する感覚が減弱することもあります。柔道整復師は、それらも把握した上で、できる限り回復するよう治療します。

予防医療も着目される

高齢者やアスリートは、けがの予防が重要です。柔道整復師は、その人の体の使い方をみて、けがをするリスクを予測することが可能です。特にスポーツでは、同じけがを繰り返さないように、体の使い方を指導する「アジリティトレーニング」で予防に努めることが大切です。今の日本は、予防医療は確立していませんが、柔道整復師が増えれば、けがの予防医療の充実が期待できます。
こうした力をもつ柔道整復師は近年、注目されています。病院の整形外科やリハビリ、接(整)骨院、デイサービス、スポーツチームのトレーナー、パーソナルトレーナーなど、活躍の場は広がっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京有明医療大学 保健医療学部 柔道整復学科 教授 櫻井 敬晋 先生

東京有明医療大学保健医療学部 柔道整復学科 教授櫻井 敬晋 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

柔道整復学、バイオメカニクス、予防医学

先生が目指すSDGs

メッセージ

柔道整復学は、日本の伝統的な手技療法を基盤とし、解剖学や生理学など現代科学の知見を取り入れた学問です。近年はスポーツ科学やスポーツ医療など先進的な研究も活発化しているとともに、予防医学の研究もおこなわれており、国民の健康維持に欠かせない職業であることも注目される一つの要因です。本学では、スポーツ関連の知識を複合的に学べ、スポーツトレーナー、アスレティックトレーナーなどをめざしやすい環境があります。コンパクトな大学だからこそ、アットホームで楽しい大学生活を送れますので、ぜひ一緒に探究しましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京有明医療大学に関心を持ったあなたは

「手の温もりと科学の眼」を持った医療人を育成!
東京有明医療大学は、保健医療学部(鍼灸学科・柔道整復学科)と看護学部(看護学科)の2学部3学科より構成され、鍼灸師・柔道整復師・看護師・保健師・アスレティックトレーナーを育成しています。
赤ちゃんから高齢者、妊婦からアスリートまで、患者に最も近い位置に寄り添い、確かな医療の知識と技術を提供できる人材を育成すべく、東京のウォーターフロントにあるキャンパスで、一人ひとりへの細やかな対応と手厚いフォローをモットーとした少人数教育を展開しています。