人間は必ずどこかに重点を置いて対象を見ている
デザインについての心理的効果を考える
心理学の一領域である実験心理学は人間の行動を対象とする基礎研究の分野です。ところが、実験心理学をデザインという観点から応用することを考えてみると、さまざまな有益な成果が得られることがわかってきました。
実験心理学では人間が視野の中にある対象を見るときの特性を示す「チェンジブラインドネス(変化の見落とし)」という現象が知られています。デザイン心理学ではこの現象をデザインの研究に利用し、人間はデザインのどの部分の変化にどのように気づくのかということを科学的に研究します。この現象は、間違い探しのような課題を試してみると、その変化が大きなものであっても意外にも気づくのに時間がかかることなどに現れます。この現象を利用することによって、例えば人間が商品パッケージのどこに注目しがちなのかがわかり、結果的に、どこに示されている情報が一番人間の目につきやすいのかということを理解することができるのです。
斬新かつ画期的なデザイン誕生の背景
デザインを科学的な視点からとらえることは、商品開発や販売促進という面においても非常に大切なことです。購買意欲をそそるデザインや色彩というものもあります。それは、広告表現ではもちろんのこと、具体的には工業製品あるいは医薬品や食品・清涼飲料水のパッケージなどあらゆる商品に表れています。また、印刷業界や広告業界においては欠かすことのできないものとなっているのです。
特に、ビジネスの現場では「斬新なデザイン」や「商品の差別化」という言葉が用いられますが、これらにもデザインに対する人間の心理が大きく影響します。人には意識の中で固定された観念がありますが、それを打ち破ることで斬新なデザインとなるのです。デザイン心理学は、このようなデザイナーの実践的活動に対しても、心理学の観点から寄与するのです。
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先生情報 / 大学情報
千葉大学 工学部 総合工学科 デザインコース 教授 日比野 治雄 先生
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