風力発電の課題と未来を考える

風力発電の課題と未来を考える

新エネルギーとしての風車の優位性

石炭・火力発電に代わる新しいエネルギーシステムとして、風力発電は優れた特徴があります。まず、温室効果ガスを発生させないクリーンな発電装置であること、エネルギー源が無尽蔵な自然風であること、設置コストが年々安くなっていて経済性にも優れていること、などがあげられます。また、風車による発電量は、風速と翼の大きさに比例するので、場所ごとに風車を変える必要がないことも利点にあげられます。つまり、同じものを異なる場所に設置することができるので、風車は大量生産が可能なのです。

風車の問題点も見据えて

一方で、課題もあります。例えば、設計を上回る風が吹いて、風車が倒れる事故が起きています。また、翼が回る時に発生する騒音や低周波、風車の景観が、地域住民の反発を招いている例もないわけではありません。鳥が風車に当たって死ぬ例も報告されていますし、今後、さらに大規模な風車が洋上に進出するときには、海洋環境への影響も懸念されています。

未来社会の構築へ向けて、前向きな解決を

しかし、これらの課題があるからといって、これだけクリーンなエネルギーである風力発電を捨ててしまうのは、あまりにもったいないことです。
台風や雷への対応については、技術的な研究が進められています。自然エネルギーゆえの不規則さ、不確かさについては、気象予測による風力発電量予測システムの開発が進行中です。鳥問題や低周波問題、海の環境問題については、科学的な環境アセスメントに取り組むとともに、地域住民との合意形成がまず、しっかりと行われるべきでしょう。
今後の生活を、どういうエネルギーに依拠するのかという大きな観点から、個人も国家も企業も、コミュニケーションを深めて、前向きな解決をしていくことが望まれています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京大学 先端科学技術研究センター  准教授 飯田 誠 先生

東京大学 先端科学技術研究センター 准教授 飯田 誠 先生

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地球科学、環境学、エネルギー工学

メッセージ

私は子どものころに「科学者になりたい」という“夢”をもちました。そして今、科学者として地球温暖化問題に向き合い、風力発電に取り組んでいます。私は“夢”というのは具体的に、そして強く願えばかなうものだと思うのです。あなたも、ぜひ、“夢”をもってください。
とかく地球温暖化問題は暗いネガティブなイメージが強いですが、強迫観念に従っていては、長続きしないと思います。例えば新エネルギー技術は、まだまだ可能性ある技術です。“夢”のある環境エネルギー社会も、きっと実現できると思います。

東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。