次世代素材「カーボンナノチューブ」の夢のような性質
不思議な伝導体としての性質をもつ次世代の素材
次世代の素材として注目されているものに「カーボンナノチューブ」があります。100%炭素でできている筒状の素材で、その直径は1ナノメートル(10億分の1メートル)という小ささです。もちろん、肉眼では見えません。
同じく炭素でできたナノレベルの繊維に「カーボンファイバー」がありますが、カーボンナノチューブはさらに次世代の素材です。カーボンファイバーは「軽い、強い」という性質から飛行機の翼などに使われていますが、カーボンナノチューブはそれだけではなく、伝導体としての性質をもつことが特徴です。特に「単層カーボンナノチューブ」は、いわば炭素原子が重ならずに並んだ1枚のシートが筒状になったもので、巻き方の具合によって、「半導体」の性質を帯びたり、「金属」の性質をもちます。
半導体としても、金属としても使える
例えば、レアメタルの一つ、インジウム。これを主成分とした酸化物は、透明で電気を通す性質があるので、「透明導電膜」として液晶画面やタッチパネルに使われているのですが、産出量に限りがあります。それに比べて、カーボンナノチューブは炭素ですから、製法さえ確立されれば、好きなだけつくり出すことができるのです。まさに夢のような素材です。これができれば、太陽電池などへの応用も可能になってきます。
また、半導体としての利用も考えられています。現在、半導体として主に使われているのはシリコンですが、極小化が進む半導体の世界では、いずれシリコンでは限界がきます。しかし、カーボンナノチューブならば、1ナノメートルのレベルで、高性能のCPUやメモリを作れます。
実用化はこれから
しかも、カーボンナノチューブは環境にもやさしい素材なのですが、残念ながら、まだレアメタルや現在使われている半導体に置き換えられるような純度の高いものの生成方法が確立していません。今、世界中で純度の高いカーボンナノチューブの開発に向けて、多くの研究者がしのぎを削っているのです。
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