手術支援ロボット「ダヴィンチ」でがんに挑む
患者さんの身体に優しい手術
20世紀は外科医療改革の世紀でした。中でも移植と内視鏡手術はその代表的な存在です。
胃や食道など消化器の手術を行う場合、「腹腔鏡(ふくくうきょう)」という内視鏡を使います。手術はおなかに6箇所ほど小さな穴を開け、腹腔鏡で中の様子をモニターに映しながら特殊な器具を使って行います。例えば従来の胃がんの手術では、おなかを30cmほども切って食道を切除し、また縫い合わせなければなりませんでした。それが腹腔鏡手術では、切る範囲が4~5cmずつと小さくて済みます。つまり患者さんの身体への負担が軽く、術後の回復が早くなる身体に優しい手術なのです。
手術支援ロボット「ダヴィンチ」とは
ロボットの導入で、腹腔鏡手術の可能性はさらに広がりました。そのロボットとは、アメリカで開発された「ダヴィンチ」です。医師は患者さんから離れた場所にある操縦室に座り、この手術支援ロボット、ダヴィンチを操って手術を行います。
ダヴィンチの優れた点は、医師がまるで自分の手と同じように直感的にロボットのアームを操作できることです。腹腔鏡に比べて傷を「縫う」作業が格段に行いやすくなりました。腹腔鏡手術の器具には、人間の関節にあたる部分がなく動きが制限されていましたが、ダヴィンチには2段階の関節があり、より意のままに器具を動かせるようになっています。腹腔鏡手術では2次元だった視覚もダヴィンチでは3次元になり、まるで身体の中に入って手術をするような、SF映画さながらの様子が実現したのです。
誰もがロボット手術を受けられる時代へ
ロボット手術のメリットは、腹腔鏡手術より患者さんの身体への負担がさらに軽く、術後の合併症を減らせることです。また、がん細胞を残さずきれいに取り除くことで、根治を高める可能性もあります。
今後、ロボット技術がさらに進歩すれば、難しいと言われる肝臓などの手術もできるようになるでしょう。より安全により効果的に手術を行うため、ロボット手術の普及が望まれています。
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