最先端科学が、おいしい冷凍食品を生み出す

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冷凍のマグロをおいしく解凍するには?

冷凍のマグロが1パックあります。より短時間で、おいしい刺身に解凍するには、どうすればよいでしょう? (1)ボウルに入れ、水道水で流し続ける。(2)冷蔵庫の冷凍室でない部分に入れる。(3)氷水を入れたボウルに入れる。答えは、(3)です。

氷水より冷蔵庫のほうが時間がかかる!?

冷凍とは、細胞中の水が凍った状態です。解凍は、これを溶かすのですが、水の凝固点(液体と固体の境目)は0度です。(1)だと、水温はこれより高いため、マグロの中心がまだ凍っているのに解凍された表面の温度は高くなり、この表面から劣化し味や色が悪くなります。(3)の氷水では、水温を0度近くにコントロールできるので、解凍した部分の温度が上がらず冷凍時の新鮮さやおいしさが保てます。(2)の冷蔵庫では時間がかかります。これは、水より空気のほうが、熱が伝わりにくいからです。
家で試すときには、マグロを密閉できるビニール袋の中にできるだけ空気を抜いて密閉し、氷水に沈めてください。袋の表面に氷の膜が張ったら時々はがして、少し芯が残るくらいで解凍終了です。

冷凍のポイントは氷の結晶をいかに小さくするか

冷凍技術のポイントは、氷の結晶をいかに小さくするかです。結晶が大きいと細胞組織にダメージを与えてしまうからです。小さな結晶にするためには、なるべく低温ですばやく冷凍すればよいことがわかっています。
「過冷却」という言葉を聞いたことがあるでしょう。凝固点以下でも液体の状態で、水の場合だと0度以下でも凍らず、-40度ぐらいまで達することがあると考えられています。通常、水は周囲から凍っていきますが、過冷却では何かの刺激で全体が一気に凍結します。つまり、冷凍にはもってこいなのですが、今のところこの状態を意図的に作ることはできません。過冷却のメカニズムを解明し、新たな冷凍技術を生み出せば、医学への応用も視野に入れられます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京海洋大学 海洋生命科学部 食品生産科学科 教授 鈴木 徹 先生

東京海洋大学 海洋生命科学部 食品生産科学科 教授 鈴木 徹 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

食品冷凍学、食品工学、食品物理化学

メッセージ

食品冷凍の世界の積年の課題の一つに「イチゴの冷凍」があります。新鮮なイチゴを冷凍し、解凍してもおいしさを再現できる技術はまだ開発されていません。植物と動物の細胞システムの相違、「水の過冷却や氷結晶発生」をよく理解した研究が必要です。このように食品冷凍分野には、生物だけでなく、物理や化学の最先端の研究成果を、食品冷凍技術という形に応用して、ダイレクトに実社会に貢献できることが魅力です。食品だけでなく、物理や工学に興味がある人にとっても、面白い分野です。

東京海洋大学に関心を持ったあなたは

東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。