多文化共生社会の中で求められる乳幼児教育・保育とは?
模索される新しい児童教育のあり方
21世紀に入り、情報革命のもとで経済のグローバル化が加速しています。人的な移動や交流が活発化し、日本を含めたアジア諸国では「多文化共生社会」といわれる大きなパラダイムの変化がもたらされました。これにともない、教育、特に乳幼児教育・保育の面でも、多言語環境の中で、いかにすべての子どもの発達を保障するのか、教育だけでなく人間としてどう育てていくのかが問われています。また「知識基盤社会」、「生涯学習時代」といわれる中で、それらに対応した新しい児童教育のあり方が模索されているのです。
学習の軸となる「母語」の習得が課題に
日本では1990年の改訂出入国管理および難民認定法の施行を契機として、日系南米人に代表される「ニューカマ―」の子どもたちが日本の保育・教育現場に急増してきました。すでに20年を経過し、子どもたちは多言語・多文化環境の中で育ってきましたが、教育の現場では依然として混乱が続いています。特にグローバル化時代にあっても、人間としての成長と学習の軸となる「母語」の習得は大きな課題です。多文化環境の中で、日本語でも両親の母国語でも学習に不可欠な知的言語運用能力が年齢相応の発達水準に到達していない「ダブルリミテッド」を示す子どもたちも多いのです。
0~6歳までの一貫した教育プログラムが重要
母語の形成に大切なのは、0~6歳の乳幼児期です。0~3歳は生活言語としての母語の土台をつくる時期で、愛情をもってわらべ歌や童謡、詩などを口ずさんで聞かせたり、手遊びをしたり、物語を語り聞かせたり、積極的に話しかけたりするなど、大人の働きかけが非常に大切です。また、3~6歳は、「学習(思考)言語」としての母語の基盤を構築する時期で、物語絵本の読み語りが大切です。この原理原則に基づいた0~6歳までの一貫した教育プログラムこそが重要であり、それぞれの国の多様な文化・伝統・環境に基づいた教育が、子どもたちの能動的な学習を支え、21世紀の新しい人材を育てていくのです。
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先生情報 / 大学情報
福山市立大学 教育学部 児童教育学科 教授 劉 郷英 先生
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