住み慣れた地域で暮らしていくための「コミュニティデザイン」

住み慣れた地域で暮らしていくための「コミュニティデザイン」

いつまでも我が家で暮らしたいのに

3世代、4世代が同居していた時代、お年寄りは家族が世話をして、亡くなるまで家で一緒に暮らすのが当たり前でした。その後、核家族化が進むと、病院や老人ホーム、デイサービスといった公的機関による支援が盛んになります。しかし今は、これらのやり方ではどうもうまくいかないということがわかってきました。世話をする人が誰もいなかったり介護者が疲弊したりで、仕方なく老人ホームへ入居する人や、家に1人で住んでいるために食事や掃除などの身の回りのことがままならない高齢者の存在が、大きな社会問題になっています。

泉北ニュータウンの試み

大阪府堺市の泉北ニュータウンは「10年先の日本の姿」といわれています。10年後の日本は、65歳以上が人口の3割を占める超高齢社会になると予測されていますが、ここはすでに3割に達しているからです。
このまちで、2010年から新しいプロジェクトが進められています。コミュニティハウス、コミュニティレストラン、24時間支援センターの3つの整備と、安心居住サポート・食健康サポートという2つのサービスを中心に、医療施設や介護施設、大学、ボランティアの各団体といった地域の人的・物的支援を連携させて、高齢者が在宅のまま安心・安全な生活ができるよう支援する「泉北ほっとけないネットワーク」という仕組みです。

みんなの「居場所」をつくる

「泉北ほっとけないネットワーク」の一環として、学生たちを中心に「コミュニティデザイン」の取り組みも進んでいます。コミュニティデザインとは、まちの中にある空き家や空きビルをリノベーション(改修)して、地域の人々の「居場所」をつくろうというものです。空き家を地域で共有する「まちの部屋」、血縁関係のない高齢者夫婦と子育て世帯が共同生活する「シェアハウス」など、さまざまなプランが企画・提案されています。このコミュニティデザインのプロフェッショナルを育成することが、今後の課題です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 生活科学部 居住環境学科 教授 森 一彦 先生

大阪公立大学 生活科学部 居住環境学科 教授 森 一彦 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

居住環境学、生活科学、環境デザイン学

メッセージ

私は大学で、居住環境をテーマに研究しています。日本は2005年に初めて人口が減少し、大きな転換期を迎えました。20世紀は効率や機能を優先した便利なまちづくりが中心でしたが、これからは地域で支え合いながら楽しく暮らす、そんな新しい感動を呼ぶまちづくりが必要です。そのための方法やあり方を考えています。具体的には、泉北ニュータウンの空き家などを利用して、みんなの居場所やレストランをつくったりしています。今後こういった新しい動きは全国に広がっていくでしょう。あなたも私たちと一緒に考えてみませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

大阪公立大学に関心を持ったあなたは

2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。