広域複合災害にそなえる「コミュニティ防災」
災害は1つだけじゃない
「広域複合災害」という言葉を知っていますか。豪雨で崖崩れが起きたり河川が氾濫したりするのは比較的身近な複合災害です。また2011年の東日本大震災では、地震で建物が壊れて火災が起こっただけでなく、大津波によって甚大な被害を受けましたし、原子力発電所が被災したことによる放射能汚染も忘れてはなりません。このほか台風、豪雪、噴火など、災害は地域によって起きやすいものや規模が違うので、自分の住む地域の特色を知り、災害に備えることが大切です。
地域で防災準備
「防災」とは、災害を未然に防ぐとともに、万一災害が起きたときは被害の拡大を防ぎ、早期に復旧を図ることです。大きな災害が起きたときは、消防や公的な専門機関だけでは手が回りません。地域の人々が日頃から協力して防災の準備を行う、つまり「コミュニティ防災」を実行する必要があります。普段から隣近所とのつながりを持ち、町内の清掃活動や夜回りなどで地域のさまざまな場所をチェックしておくことも有益です。緊急の場合は、消火、救助、救命といった本来は専門家の仕事にも対応しなくてはならない可能性があります。日頃の訓練で方法を知っておくとともに、こういった災害時の助け合いが、地域の自主防災組織(消防団など)、災害ボランティア、NPOによる援助などとうまく連携する仕組みも必要です。
防災力を高める「近隣資産」
子どもや高齢者が歩ける半径500m程度の範囲を「近隣」といい、この近隣の中にある神社や寺、学校、施設、公園、広場などを「近隣資産」といいます。地域住民のつながりを強める祭りや運動会などのイベントも資産になります。この近隣資産が多い地域ほど防災に強いといえます。なぜなら、近隣資産は避難所や災害支援拠点になり、人々のつながりが強ければ、みんなで協力して対応できるからです。
忘れた頃にやってくるといわれる災害に備えるには、コミュニティの防災力を高めることが不可欠なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 生活科学部 居住環境学科 教授 森 一彦 先生
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