テレビとインターネット、社会に与えた影響はどちらが大きい?
食卓での会話を創りだしたテレビの衝撃
インターネットは、世の中を大きく変えました。けれども、社会に与えた影響はテレビの方がはるかに大きく、しかも短期間の革命だったかもしれません。なぜなら、ネットユーザーの中心層は若い人たちで、高齢者はそれほど使っていません。ところがテレビが普及した時は老若男女を問わず、誰もが毎日何時間も見ていました。家庭にテレビが入ったから、人々は食卓で会話をするようになったのであり、それ以前は共通の話題もなく食事は黙ってするのが一般的でした。
テレビ放送の最初の目的は教育
テレビ放送の開発も軍事技術と不可分です。最初に定時放送を開始したナチス・ドイツでも、砲弾やミサイルの誘導システムとして開発され、やがて宣伝や教育へと流用されました。
日本でも導入当初、テレビの目的には教育が掲げられました。例えば、今のテレビ朝日は、日本教育テレビとしてスタートします。そのため 午前中の番組は、すべて学校教育向けの内容でした。あまり知られていませんが、現在でも一般のテレビ放送局は免許条件として、教育、教養、報道、娯楽の4つの要素のうち、全放送内容の30%を教育・教養系の番組で構成することが義務付けられています。
最初に触れるメディアで社会に違いは生まれるか
日本ではテレビの黄金時代は1960年代から1970年代までで、その後は、さまざまなニューメディアに注目が集まりました。
メディア論とは比較メディア研究です。私たちはテレビの次にインターネットに出会いましたが、もし最初に接するメディアがテレビではなく、インターネットに接続されたタブレット端末だったらどうなるか、それは興味深い研究テーマです。アフリカの奥地などではテレビよりも先にインターネットに触れる人が実際にいるはずです。
最初にテレビを経てインターネットに入っていった人たちと、テレビを知らずにいきなりインターネットに触れた人たちの間には、どのような違いが生まれるのか。それは現代日本のメディア論を考える上で、とても興味深いテーマです。
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先生情報 / 大学情報
京都大学 大学院教育学研究科 教授 佐藤 卓己 先生
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メディア文化論、メディア史先生への質問
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