言葉のバリエーションに富んだ島、台湾
台湾の言語は1つじゃない
台湾には、もともと島に住む先住民族と、中国から渡ってきた人たちがいます。現在話されている台湾語は、主に中国福建省南部の沿岸地域で話されるビンナン語に近いとされます。かなり複雑な音を持つ言葉で、それが台湾に入り、広まっていくうちに言語及び文化の接触によって再び変化していきました。複雑な発音の方が、より古い音声体系に近いとみられています。首都の台北で話される言葉は北部訛(北部方言)と呼ばれます。また、話者数が一番多いのは、台湾中部より南で話されている南部訛(南部方言)などがあります。しかし、少し離れた、観光客がほとんど訪れないような地方に行くと、それと微妙に違う発音だったり、同じ発音でも意味が違ったりします。
発音で意味が違う
台北では日本のことを「リップン」と言いますが、ある地域では発音が変わり「ジップン」と変わります。そして「また今度」という意味で「アオリ」という単語を使うと、その地域では、「あさって」という意味に受け取られるといった具合です。語尾の上げ下げといったイントネーションの違いで、意味が変わります。
さらに戦前から戦中にかけ、日本人が移民していた頃の名残が、台湾東部のアミ族の人々の言葉に残っています。地名、親族名称をはじめ、短いフレーズまで、日本語を使っています。また台湾語の中に、ときどき日本語の単語が混ざります。面白いことに彼らは日本語として使っていません。2つの国の言葉が融合する形で変化しています。
変化する言葉
言葉の変化は、世界各地で見られます。台湾の場合は地方単位、村単位、さらに同じ村の中でも川を越えると違うという風に変化します。さらに民家が点在するような場合、「あそこの家の人たちは、自分たちと言い方が少し違う」という具合に分かれ、住民が少ないエリアほど、言葉がたくさん存在する傾向です。そうした言葉の裏には、その地域や民族の歴史、また文化が含まれています。言語の研究が、その地域や人々を深く理解することにつながるのです。
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麗澤大学 外国語学部 外国語学科 准教授 キュウ イーキ 先生
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