人間は、「物語」なしでは生きていけない
人間にとっての「物語」とは
テレビ、小説、映画など、私たちの生活の中では、日々数え切れないほどの物語が生み出されています。一体なぜ、世の中は、これほど多くの物語で溢れているのでしょうか。それは、私たち人間は「物語」がないと生きていくことができないからです。
例えばニュースで、客観的な情報やデータだけを受け取っていると思っていても、私たちはそれを物語として理解します。国際紛争にしても、放射能の影響についても、人間は、情報やデータだけでは物事を考えることができません。情報がどのような物語を作ることで人々に影響を与えるのか知ることで、世の中の本当の動きが見えてきます。
どの商品を選ぶかにも物語が関わっている
普段使うシャンプーや化粧品を選ぶときにも、物語が関わっています。本人は、その効能や成分によって商品を選んでいると思っていても、実際は誰もが広告などで印象的な映像とともにすりこまれた物語の影響を強く受けています。あるシャンプーを使うことにより、映像と自分の姿とを重ね合わせ、自分はこう変わるのだという物語を与えられるのです。そのように、物語は私たちの日々の生活にも大きな影響を与えています。
一つの事実の裏に複数の物語があることを知る
物語を考える上で映画は多くのことを教えてくれます。映画の作り手には作り手の意図がありますが、いい映画は、同じ映像から複数の異なる解釈、物語を生みだします。見る人がそれぞれ、映像から自分なりの物語を構築していくことができるだけの多面性を持っているからです。それと同時に、映像をただ一つの物語に単純化してはいけないということも教えてくれます。そこには必ず人間の複数の複雑な感情が交差していることがわかるでしょう。
映画が物語を伝える過程について見つめることで、私たちは映像と物語の影響力を理解するとともに、それを一つの物語に完結してしまうことに対して疑いを持つことを学ぶのです。それは、映像メディアの作る物語に一方的に操られないということです。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 総合科学部 社会総合科学科 教授 田久保 浩 先生
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