経済学における「フィールドワーク」とは

経済学における「フィールドワーク」とは

経済理論では説明できない事象が起こる

実際の経済では、理論だけで説明できない事象が起きていることがあります。例えば、価格は需要曲線と供給曲線が交わるところで決定されると説明されますが、世の中では人間関係や地域のしがらみなど、いろいろな事情で理論とは異なる状況になることがあります。こうしたことを知るには、実際に地域の産業や流通の現場を見て、当事者に話を聞くなど、生の情報を得て、それらを整理することが必要になります。こうした調査を「フィールドワーク」「社会調査」と呼び、これらの手法は、社会学などの他分野でも実施されますが、経済学においても有用です。

現地に行って初めてわかることも

例えば、新潟県三条市は、古くから鍛冶技術を生かしたものづくりの町として発展し、さまざまな鍛造や機械加工の会社、工場があります。なぜ、現在まで金属加工業が存続しているのか現地で調査したところ、機械工具には廉価品から職人手づくりの高級品まであり、製品の生産工程や流通が全く異なることや、ある製品は輸出され、海外に立地している日系企業の現地職人が使用していることなどがわかりました。海外の日系企業は、製品の質を保つために、やはり質の高い日本製工具が必要なのです。このように、金属加工産業には日本の高い技術があり、そのノウハウを持つ三条市の企業などが、技術革新や情報化が進む現代においても活躍しています。

事前調査とコミュニケーションが重要なポイント

フィールドワークで大切なのは、事前調査とコミュニケーションです。現地調査に至るまでの準備を含め自分でデザインすることが必要になります。何の知識も持たないでヒアリングしても、成果は得られません。手間や時間はかかりますが、対象地域について、調査テーマや聞きたいことをまとめておくことが必要です。その上で地域へ出て、いろいろな人に話を聞き、情報やデータをとりまとめることが非常に重要です。フィールドワークとは、現地に行って、新しい発見を得ることができる、座学とは異なる現場主義の授業です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

立正大学 経済学部 経済学科 准教授 櫻井 一宏 先生

立正大学 経済学部 経済学科 准教授 櫻井 一宏 先生

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経済学

先生が目指すSDGs

メッセージ

経済学部というと、難しいイメージを持つ人がいるかもしれません。しかし、そんなことはありません。立正大学経済学部には「経済フィールドワーク」という授業があり、実際に経済の現場に出かけていき、地域の産業や経済の状況などを一緒に学ぶことができます。
理論だけではなく、経済の実情、現状を一緒に学ぶことで、経済学的な考え方を習得できます。経済学に興味を持って、私たちと一緒に学びませんか。

先生への質問

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立正大学は、9学部16学科を有し、多彩な学問分野において広く深く学ぶことができます。加えて充実したキャリア形成支援により、社会の多方面で活躍する優れた人材を輩出しています。本学は1872年(明治5年)東京・芝に開校の起点となる小教院を設立し、2022年で開校150周年を迎えました。品川キャンパスは山手線2駅から徒歩5分の都市型キャンパス、熊谷キャンパスは東京ドーム約8個分の広大な自然環境型キャンパスをもつ、学生数1万人を超える総合大学です。